2008年08月07日(木) 23:13
「サマー2000シリーズ」第3戦小倉記念は、出走馬中唯一のG1馬ドリームジャーニーがハンデにも恵まれ、貫録の違いを見せつける完勝。
いつも通り後方待機策からの競馬。3コーナーでダイシングロウをマークするようにスパートすると、外から一気の捲り。直線半ばでダイシングロウを交わし、ステッキを使わず3馬身差の楽勝。レコードに0.1秒差と迫る1分57秒9の好時計だった。
コーナーで一気に上がっていく脚は、小回り適性の表れ。
スパートしてからあまりの勢いの良さに、池添も「4コーナーでは逆にちょっと待つくらいだった」と言うほど。「一瞬の切れ味」だけでなく「長く良い脚」を使うことができた。小回りコースで、持ち味であるピッチ走法が大きな威力を発揮した。
「コーナーが4つあるコースは合うはず」とここに参戦した陣営の読みがズバリ的中した。
春はマイル戦を2度使ったが、まったく結果が出ず。
長距離戦では不利なピッチ走法ながら菊花賞で5着に食い込んだスタミナを活かすには、マイルより二千くらいの距離が合っているのだろう。
当然、秋には再びGI路線に挑戦するのだろうが、決してレベルが高いとは言えない現4歳牡馬勢の中にあって、クラシック最高5着のこの馬にとって今後のポイントはどれだけ成長できるか。血統背景からは、成長力は十分。今回の見事な走りでその一端を見せてくれた。
元々、この馬は輸送に弱く、輸送で20キロ近く体が減ることもあった。
しかしながら、今回は、池江寿師が「賭けだった」という初めての2日前輸送にも関わらず、輸送による馬体減は10キロに留まり、小倉到着後の3日間で8キロも盛り返した。猛暑の中の輸送で馬体が減るのは仕方ないにせよ、短期間で8キロも馬体を戻したあたりにもこの馬の今の充実ぶりと、本格化の兆しを伺える。
それと同時に輸送競馬のある秋のG1戦線に向けて大きな収穫となった。
<ドリームジャーニー馬体重の変動 (追い切り後〜レース当日)>
424(木曜栗東)→414(金曜小倉)→418(土曜)→422(日曜)
この馬の実力と成長は当然認めるところだが、今回はハンデと相手関係に恵まれたことも否めない。GIとG2での勝利がありながら57キロ。重賞初挑戦のダイシングロウと1キロしか差がないことからもいかにこの馬がハンデに恵まれたかが分かる。このレースを回顧する上でこのことに触れない訳にはいかない。
以前にも書いたが、実績馬の恵ハンデにはハンデキャッパーの打点的思惑が絡んでいることが見え隠れしている。つまり、主催者JRAが夏競馬を盛り上げるために、実績のある有力馬が出走しやすくしたということだ。
だが、それは魅力的なレースをファンに提供するという本質からは外れている。
ハンデ戦の存在意義は、ハンデによって各馬の力関係を拮抗させ、予想する上でも観戦する上でもよりおもしろいレースを提供すること。
JRAはその本質を見誤ってはいけない。
レース後、短期放牧に出たドリームジャーニー。
今後の予定は未定とのことだが、「今日の勝利でキッカケはつかめたと思う」と池江寿師。
約10カ月ぶりの勝利を弾みに、ドリームジャーニーの「夢の旅」はここから再出発だ。
重賞初挑戦ながら2連勝の勢いが評価されて1番人気に推されたダイシングロウは2着。
調教後から18キロの体重減での出走だったが、決して細くはなかった。
ドリームジャーニーには、完全に格の違いを見せつけられてしまったが、1キロのハンデ差を考えれば、よくやったと言える。
押し出されるように1番人気に推されたとは言え、重賞初挑戦ということを考えれば、立場はあくまでチャンレンジャー。川田将雅騎手もチャンレジャーらしく思い切りの良い騎乗で、この馬の力を出し切った。早めに仕掛け、ドリームジャーニーに目標にされる形になったが、切れる脚が使えるタイプの馬ではないだけに、川田の判断は間違ってはいなかった。
ダンスインザダーク産駒のこの馬は、デビューが遅れて、まだ13戦しかしていない。まだまだこれから強くなっていくはず。楽しみな馬が出てきた。
3着には、ハンデ戦らしく人気薄の軽ハンデ馬ケンブリッジレーザが突っ込んできた。
準オープンに昇級後は結果が出ていなかったが、軽ハンデに加え、展開が嵌った。
先行から後方待機まで変幻自在の脚質と、マイルからクラシックディスタンスまでこなす距離の融通性など、掴み所の難しい馬であるが、今後も人気薄で狙ってみたい。
陣営の狙い通り8キロ増と馬体を回復させて挑んだヴィータローザが4着。
相変わらずの決め手不足ながら年齢を考えればよくやっている。
次走は例年通り、新潟記念か。新潟は重賞で3着3回と相性の良い舞台。
出走してくれば、注目の1頭。
逃げたミヤビランベリが5着に踏ん張った。
オペラハウス産駒。今回のようなパンパンの高速馬場は合わない。
前走より時計を1秒近く詰めており、力は出し切った。
荒れ馬場で狙いたい馬。福島記念あたりでおもしろそう。
それまではおとなしくしてればいい。
さて、長期休養明け2戦目のサンレイジャスパー。
前走に続き今回も最後まで息が持たず失速し9着。
最後の失速は明らかにスタミナ切れ。
この原因は馬体が重いことと、心肺機能が復調していないことが考えられる。
それでも無残な結果に終わった前走よりは少しずつマシになってきている。
前走の回顧でも書いていたが、この馬は使い込まれて馬体が研ぎ澄まされたように絞れた状態になってこそ、力を十分に発揮できるタイプなのだろう。
「無理なくいい位置が取れたんですが…。まだ良化途上なのかもしれません」とは佐藤哲騎手。
高橋成師も「マーメイドSよりも最後までくたびれなかったが、もっと目方が減らないと」と馬体重が思った以上に減らなかったことを敗因に挙げている。
輸送による馬体減は10キロと想定通りだったが、追い切り後の馬体重が2キロしか減っていなかったことが計算外だったのだろう。
今回の馬体重は478キロ。
絶好調だった昨年のこのレース時と比較しても6キロ重い。
成長分があったとしてもやはり“まだ重い”のだろう。
次走は新潟記念を予定。
今回の内容を見ると、次走で昨年並みの状態まで持っていくのは難しいとは思う。だが、距離、平坦で長い直線等この馬にとって最高の舞台だけに復調途上でも馬券絡みまで期待できるだろう。
ここ2戦は馬券的には完全に無視していたが、次走では人気も落ちて妙味も出るだろうし、狙ってみたいと思っている。
いつも通り後方待機策からの競馬。3コーナーでダイシングロウをマークするようにスパートすると、外から一気の捲り。直線半ばでダイシングロウを交わし、ステッキを使わず3馬身差の楽勝。レコードに0.1秒差と迫る1分57秒9の好時計だった。
コーナーで一気に上がっていく脚は、小回り適性の表れ。
スパートしてからあまりの勢いの良さに、池添も「4コーナーでは逆にちょっと待つくらいだった」と言うほど。「一瞬の切れ味」だけでなく「長く良い脚」を使うことができた。小回りコースで、持ち味であるピッチ走法が大きな威力を発揮した。
「コーナーが4つあるコースは合うはず」とここに参戦した陣営の読みがズバリ的中した。
春はマイル戦を2度使ったが、まったく結果が出ず。
長距離戦では不利なピッチ走法ながら菊花賞で5着に食い込んだスタミナを活かすには、マイルより二千くらいの距離が合っているのだろう。
当然、秋には再びGI路線に挑戦するのだろうが、決してレベルが高いとは言えない現4歳牡馬勢の中にあって、クラシック最高5着のこの馬にとって今後のポイントはどれだけ成長できるか。血統背景からは、成長力は十分。今回の見事な走りでその一端を見せてくれた。
元々、この馬は輸送に弱く、輸送で20キロ近く体が減ることもあった。
しかしながら、今回は、池江寿師が「賭けだった」という初めての2日前輸送にも関わらず、輸送による馬体減は10キロに留まり、小倉到着後の3日間で8キロも盛り返した。猛暑の中の輸送で馬体が減るのは仕方ないにせよ、短期間で8キロも馬体を戻したあたりにもこの馬の今の充実ぶりと、本格化の兆しを伺える。
それと同時に輸送競馬のある秋のG1戦線に向けて大きな収穫となった。
<ドリームジャーニー馬体重の変動 (追い切り後〜レース当日)>
424(木曜栗東)→414(金曜小倉)→418(土曜)→422(日曜)
この馬の実力と成長は当然認めるところだが、今回はハンデと相手関係に恵まれたことも否めない。GIとG2での勝利がありながら57キロ。重賞初挑戦のダイシングロウと1キロしか差がないことからもいかにこの馬がハンデに恵まれたかが分かる。このレースを回顧する上でこのことに触れない訳にはいかない。
以前にも書いたが、実績馬の恵ハンデにはハンデキャッパーの打点的思惑が絡んでいることが見え隠れしている。つまり、主催者JRAが夏競馬を盛り上げるために、実績のある有力馬が出走しやすくしたということだ。
だが、それは魅力的なレースをファンに提供するという本質からは外れている。
ハンデ戦の存在意義は、ハンデによって各馬の力関係を拮抗させ、予想する上でも観戦する上でもよりおもしろいレースを提供すること。
JRAはその本質を見誤ってはいけない。
レース後、短期放牧に出たドリームジャーニー。
今後の予定は未定とのことだが、「今日の勝利でキッカケはつかめたと思う」と池江寿師。
約10カ月ぶりの勝利を弾みに、ドリームジャーニーの「夢の旅」はここから再出発だ。
重賞初挑戦ながら2連勝の勢いが評価されて1番人気に推されたダイシングロウは2着。
調教後から18キロの体重減での出走だったが、決して細くはなかった。
ドリームジャーニーには、完全に格の違いを見せつけられてしまったが、1キロのハンデ差を考えれば、よくやったと言える。
押し出されるように1番人気に推されたとは言え、重賞初挑戦ということを考えれば、立場はあくまでチャンレンジャー。川田将雅騎手もチャンレジャーらしく思い切りの良い騎乗で、この馬の力を出し切った。早めに仕掛け、ドリームジャーニーに目標にされる形になったが、切れる脚が使えるタイプの馬ではないだけに、川田の判断は間違ってはいなかった。
ダンスインザダーク産駒のこの馬は、デビューが遅れて、まだ13戦しかしていない。まだまだこれから強くなっていくはず。楽しみな馬が出てきた。
3着には、ハンデ戦らしく人気薄の軽ハンデ馬ケンブリッジレーザが突っ込んできた。
準オープンに昇級後は結果が出ていなかったが、軽ハンデに加え、展開が嵌った。
先行から後方待機まで変幻自在の脚質と、マイルからクラシックディスタンスまでこなす距離の融通性など、掴み所の難しい馬であるが、今後も人気薄で狙ってみたい。
陣営の狙い通り8キロ増と馬体を回復させて挑んだヴィータローザが4着。
相変わらずの決め手不足ながら年齢を考えればよくやっている。
次走は例年通り、新潟記念か。新潟は重賞で3着3回と相性の良い舞台。
出走してくれば、注目の1頭。
逃げたミヤビランベリが5着に踏ん張った。
オペラハウス産駒。今回のようなパンパンの高速馬場は合わない。
前走より時計を1秒近く詰めており、力は出し切った。
荒れ馬場で狙いたい馬。福島記念あたりでおもしろそう。
それまではおとなしくしてればいい。
さて、長期休養明け2戦目のサンレイジャスパー。
前走に続き今回も最後まで息が持たず失速し9着。
最後の失速は明らかにスタミナ切れ。
この原因は馬体が重いことと、心肺機能が復調していないことが考えられる。
それでも無残な結果に終わった前走よりは少しずつマシになってきている。
前走の回顧でも書いていたが、この馬は使い込まれて馬体が研ぎ澄まされたように絞れた状態になってこそ、力を十分に発揮できるタイプなのだろう。
「無理なくいい位置が取れたんですが…。まだ良化途上なのかもしれません」とは佐藤哲騎手。
高橋成師も「マーメイドSよりも最後までくたびれなかったが、もっと目方が減らないと」と馬体重が思った以上に減らなかったことを敗因に挙げている。
輸送による馬体減は10キロと想定通りだったが、追い切り後の馬体重が2キロしか減っていなかったことが計算外だったのだろう。
今回の馬体重は478キロ。
絶好調だった昨年のこのレース時と比較しても6キロ重い。
成長分があったとしてもやはり“まだ重い”のだろう。
次走は新潟記念を予定。
今回の内容を見ると、次走で昨年並みの状態まで持っていくのは難しいとは思う。だが、距離、平坦で長い直線等この馬にとって最高の舞台だけに復調途上でも馬券絡みまで期待できるだろう。
ここ2戦は馬券的には完全に無視していたが、次走では人気も落ちて妙味も出るだろうし、狙ってみたいと思っている。
2008年07月29日(火) 23:13
新潟の真夏の電撃戦アイビスサマーダッシュ。
今年のこのレースを制したのは、「牝馬」、「外枠」というこのレースのキーワードに当て嵌まったカノヤザクラだった。
このカノヤザクラはデビューから2連勝すると、3歳時にもスプリント重賞で2着に2度入るなど以前からスプリンターとしての資質は高いものを持っていたが、古馬になってからのここ3戦は出遅れが響き消化不良のレースが続いていた。
まずその懸念されていたスタート。これを今回は上手く決めた。
「最初は追走にてこずったが後半から持ち前の末脚が出てきた。前に壁ができて、どこを進もうかと思ったが、いいタイミングで横の馬のスピードが鈍った。うまく出せたね」との小牧のコメント通り、テンこそ行き脚がつかなかったが、サープラスシンガーを壁にして末脚をためられたのが奏功した。そして、前にいたマルブツイースターの脚色が鈍り、僅かなすき間が生じた好機を逃さず、素早く馬体を入れ、残り1ハロン付近から1頭分内に進路を変更。前が開くと持ち前の末脚が炸裂。サープラスシンガーを内から交わすと、シンボリグランの猛追も半馬身しのいだ。
小倉で管理馬の勝利を見届けた橋口師も「スタートも他馬と一緒に出たしエンジンが掛かってからが強い。思い通りの競馬」と称える素晴らしい内容だった。
カノヤザクラの勝因は、まず課題のスタートを上手く決められたこと。
次に、直線競馬ではほとんどの馬が外へと進路をとるため、もたついているこの馬の前に壁ができ、却ってこれによって上手く脚がためられたこと。
そして、馬群の間隙を突いて上手く抜け出した小牧の好騎乗。
直線で1000mしかないので、競馬初心者の中には、「騎手はただ掴まっているだけでいいんじゃないか」、「こんなに短い距離では展開なんてあったもんじゃないだろう」と考えてしまう人もいるかもしれないが、そんな単純なものではない。
レースを見れば、まずほとんどの騎手が有利な外側のコースへと進路を変えていくのを誰もがすぐに気付くはず。
当然、その際には他馬の進路を妨害しないように、また馬の走るリズムやスピードを殺さないように考えて上手く進路変更しなければならない。そして、各馬が殺到した馬群をいかに上手く捌くか。
中には、今回の松岡騎手のように、敢えてインコースの進路を選択するなど僅か1分にも満たない短い時間のレースの中でも当然の事ながら騎手はいろいろと考えて騎乗しているわけだ。当然そこには技術も要するし、駆け引きも存在する。
さらにバイクなどの乗り物と違って、馬は騎手の意に反して走ることもあるので、思い通りの騎乗ができるとは限らない。
各馬が馬場外側に殺到し、馬体を併せて走ることでその馬の闘争本能に火がつき、オーバーペースに繋がってしまうこともある。昨年などがまさにその展開。
日曜、UHFの競馬中継で柏木氏の代役解説を務めた日刊競馬の黒津氏が稲妻特別(芝1000m)の解説の中で、何人かの騎手たちに直接聞いた“直線競馬における騎乗のポイント”を紹介していた。
「行けるからといって、行けばいいってもんじゃない。例え1000mしかなくてもちゃんとラップを考えて乗らなければ最後までもたない」とほとんどの騎手が口を揃えて言っていたという。
そんな話を紹介するまでもなく、直線競馬では最初から飛ばしてそのままスピードで一気に押し切るというのはかなり至難の業で、前半をいかにうまくなだめながら末脚をタメることができるかということがポイントであることは、今では競馬界の常識的なことになっている。
このレースを2度勝っているカルストンライトオにしても、その2つのレースの最初の2Fと最後の2Fを比較すると、どちらのレースも最後の2Fの方が速い。
つまり、他馬との絶対的な能力の開きがあるため見かけ上では逃げた形になってはいるものの決してスピードで一気に押し切ったという訳ではなく、最初に脚を溜めることで末脚の伸びに繋げているのだ。
05年にこのレースを逃げ切って制したテイエムチュラサンも同様。最後の2Fの方が最初の2Fよりラップが速く、テンから飛ばして押し切ったという訳ではない。また3F目に一度10.7とラップを落としてタメを作ったことも逃げ切り勝ちの大きな要因となっている。
これは前述したように直線競馬ならではの常識的な特徴で、同じ短距離でもコーナーを回る1200m戦などでは、最初のコーナーまでにポジション争いが激しくなるので、逃げ馬のラップが前半より後半の方が速くなるということはまずほとんどない。
●アイビスSD過去のレースのラップ比較
左から 開催年 レースラップ、(前半2Fと後半2Fのラップ)、前半3Fのラップ
<カルストンライトオ>
02年12-9.8-10.2-9.6-12.1(21.8-21.7) 前半3F32.0
04年11.9-10.1-10.2-10.5-11.2(22.0-21.7) 前半3F32.2
<テイエムチュラサン>
05年11.7-10-10.7-10.2-11.4(21.7-21.6) 前半3F32.4
今年11.8-9.9-10.4-10.5-11.6(21.7-22.1) 前半3F32.1
今年の場合は、サープラスシンガー、クーヴェルチュール、エムオーウイナー、エイムアットビップが飛ばして先行争いを繰り広げ、最初の2Fのタイムは日本レコードを記録したカルストンライトオの02年のものを上回り、3F目でも0.1秒しか違わない。カルストンライトオとの実力差を考えると、今回の先行勢4頭にとってはかなり厳しいペース。当然その後は失速し、後続の馬に差し切られるという展開になってしまった。
この展開で逃げたので、最後はさすがに失速してしまったものの、4着に入る粘りを見せたサープラスシンガーはかなり力があると言える。
テンから飛ばせるスピードは、むしろコーナーがある1200m戦向きだろう。
このサープラスシンガーとは対照的に、1〜3着馬はともに前半で脚をタメれたことが好走の要因。
2着に入ったシンボリグランは、前半置かれ気味ながら後半徐々に加速し、ゴール前で強襲した。元来、不器用なタイプでこれまでコーナーのあるレースでは最後に脚を余してしまうようなレースが度々あったが、器用さを要求されない直線競馬で力を出し切ることができた。
コーナーのあるレースでは、どうしてもコーナーでの立ち回りや、瞬時に加速する器用さが要求されるが、直線競馬では、助走をするように徐々に加速できるので、シンボリグランのような不器用なタイプの馬でも力を発揮できる。
メジロダーリング(01年1着)、シンボリスウォード(01年2着)、ブレイクタイム(02年2着)、シンボリグラン(08年2着)とDanzig系の馬がこのレースで好成績を収めているのもそういった要因が多分に絡んでいるのだろう。
Danzig系の馬は、その他にもマグナーテン、ビコーペガサス、アグネスワールド、ファインモーション等どちらかと言うと、相手のペースに合わせて器用に立ち回ることは苦手だが、自分のペースで走ることができれば爆発的な力を発揮するタイプの馬が多い。
Danzig直仔のステキシンスケクンなんかもその例外ではない。
06年のスプリンターズSでも楽に先行できたように、元来から高いスピード能力を持っているこの馬も今回は「みんなが外へ来るから、行きたいポジションを取れなかった」とユーイチが語ったように、騎手同士の駆け引きに敗れ6着に終わったと言える。
気性的に自分のペースで走れないと力を発揮できないので、非常に当てにしづらいタイプの馬であるが、今後も嵌ったら怖い存在。
同じDanzig直仔のビコーペガサスなんかと同様にマイルまでこなせるスプリンターと言えるこの馬は、基本的にはスプリント戦がベストだろう。
3着アポロドルチェは、序盤から追い通しながらメンバー中最速の上がりで伸びて3着を確保。
「周りのスピードに驚いた。ここまで置かれるとは思っていなかったよ。さすがに忙しかったね。でも最後まで良く伸びてくれたし、ここを使ったことがこの後いい刺激になってくれれば」と勝浦がコメントしたように、結果的に序盤で置かれたことが好走に繋がった。逆にもしテンから飛ばせるようなスピードがこの馬にあったら、速い流れに巻き込まれて最後に失速していただろう。
その典型が1番人気に支持されたエイムアットビップ。
「最初は楽についていけたが途中で反応がなくなり一番早く手が動いてしまった。初めての直線競馬に馬が戸惑っている感じだった。先行力があるだけに残念な結果。直線競馬では持ち味が出ないのかも…」と吉田隼騎手。
このメンバーでも楽に先行できるスピードが逆に仇となってしまった。
直線競馬ではコーナーを利用して息を入れることができないので、いくらスピードがあってもガンガン行きたがってしまうような気性の馬は直線競馬には向かない。そういうタイプの馬は、直線競馬では自滅の道を突き進むだけとなる。
楽に先行できるスピードがあるので、決して1000mが短いという訳ではなく、他馬と併走してもムキにならず、序盤に力をセーブできるようになれば、直線競馬でも対応できるようになるだろう。
今年の夏のスピード比べ。勝ち時計は54.2秒だった。決してレベルが高いとは言えない。
もし、サチノスイーティーが出ていれば・・とつい考えてしまう。
サチノスイーティーは、昨年のこのレースで各馬横一線となったガチンコ勝負の限界を超えるようなスピード比べに巻き込まれ、「展開のアヤ」で5着に敗れてしまったが、この馬のペースで走り切ることができれば今年も好勝負できていただろう。
サチノスイーティー、早く復帰してもらいたいものだ。
時間とはおもしろいものである。
同じ1分でも普段の1分と、手に汗を握りレースを凝視しているときの時間の感覚はまったく異なる。
1分にも満たない短い時間のレースでも見どころはたくさんあり、奥が深く単純なものではない。
サチノスイーティーのあの激走からもう1年が経つ。
早いものだ・・
歳を重ねる度に、1年という歳月が早く感じる。
時間とはおもしろいものだ。
今年のこのレースを制したのは、「牝馬」、「外枠」というこのレースのキーワードに当て嵌まったカノヤザクラだった。
このカノヤザクラはデビューから2連勝すると、3歳時にもスプリント重賞で2着に2度入るなど以前からスプリンターとしての資質は高いものを持っていたが、古馬になってからのここ3戦は出遅れが響き消化不良のレースが続いていた。
まずその懸念されていたスタート。これを今回は上手く決めた。
「最初は追走にてこずったが後半から持ち前の末脚が出てきた。前に壁ができて、どこを進もうかと思ったが、いいタイミングで横の馬のスピードが鈍った。うまく出せたね」との小牧のコメント通り、テンこそ行き脚がつかなかったが、サープラスシンガーを壁にして末脚をためられたのが奏功した。そして、前にいたマルブツイースターの脚色が鈍り、僅かなすき間が生じた好機を逃さず、素早く馬体を入れ、残り1ハロン付近から1頭分内に進路を変更。前が開くと持ち前の末脚が炸裂。サープラスシンガーを内から交わすと、シンボリグランの猛追も半馬身しのいだ。
小倉で管理馬の勝利を見届けた橋口師も「スタートも他馬と一緒に出たしエンジンが掛かってからが強い。思い通りの競馬」と称える素晴らしい内容だった。
カノヤザクラの勝因は、まず課題のスタートを上手く決められたこと。
次に、直線競馬ではほとんどの馬が外へと進路をとるため、もたついているこの馬の前に壁ができ、却ってこれによって上手く脚がためられたこと。
そして、馬群の間隙を突いて上手く抜け出した小牧の好騎乗。
直線で1000mしかないので、競馬初心者の中には、「騎手はただ掴まっているだけでいいんじゃないか」、「こんなに短い距離では展開なんてあったもんじゃないだろう」と考えてしまう人もいるかもしれないが、そんな単純なものではない。
レースを見れば、まずほとんどの騎手が有利な外側のコースへと進路を変えていくのを誰もがすぐに気付くはず。
当然、その際には他馬の進路を妨害しないように、また馬の走るリズムやスピードを殺さないように考えて上手く進路変更しなければならない。そして、各馬が殺到した馬群をいかに上手く捌くか。
中には、今回の松岡騎手のように、敢えてインコースの進路を選択するなど僅か1分にも満たない短い時間のレースの中でも当然の事ながら騎手はいろいろと考えて騎乗しているわけだ。当然そこには技術も要するし、駆け引きも存在する。
さらにバイクなどの乗り物と違って、馬は騎手の意に反して走ることもあるので、思い通りの騎乗ができるとは限らない。
各馬が馬場外側に殺到し、馬体を併せて走ることでその馬の闘争本能に火がつき、オーバーペースに繋がってしまうこともある。昨年などがまさにその展開。
日曜、UHFの競馬中継で柏木氏の代役解説を務めた日刊競馬の黒津氏が稲妻特別(芝1000m)の解説の中で、何人かの騎手たちに直接聞いた“直線競馬における騎乗のポイント”を紹介していた。
「行けるからといって、行けばいいってもんじゃない。例え1000mしかなくてもちゃんとラップを考えて乗らなければ最後までもたない」とほとんどの騎手が口を揃えて言っていたという。
そんな話を紹介するまでもなく、直線競馬では最初から飛ばしてそのままスピードで一気に押し切るというのはかなり至難の業で、前半をいかにうまくなだめながら末脚をタメることができるかということがポイントであることは、今では競馬界の常識的なことになっている。
このレースを2度勝っているカルストンライトオにしても、その2つのレースの最初の2Fと最後の2Fを比較すると、どちらのレースも最後の2Fの方が速い。
つまり、他馬との絶対的な能力の開きがあるため見かけ上では逃げた形になってはいるものの決してスピードで一気に押し切ったという訳ではなく、最初に脚を溜めることで末脚の伸びに繋げているのだ。
05年にこのレースを逃げ切って制したテイエムチュラサンも同様。最後の2Fの方が最初の2Fよりラップが速く、テンから飛ばして押し切ったという訳ではない。また3F目に一度10.7とラップを落としてタメを作ったことも逃げ切り勝ちの大きな要因となっている。
これは前述したように直線競馬ならではの常識的な特徴で、同じ短距離でもコーナーを回る1200m戦などでは、最初のコーナーまでにポジション争いが激しくなるので、逃げ馬のラップが前半より後半の方が速くなるということはまずほとんどない。
●アイビスSD過去のレースのラップ比較
左から 開催年 レースラップ、(前半2Fと後半2Fのラップ)、前半3Fのラップ
<カルストンライトオ>
02年12-9.8-10.2-9.6-12.1(21.8-21.7) 前半3F32.0
04年11.9-10.1-10.2-10.5-11.2(22.0-21.7) 前半3F32.2
<テイエムチュラサン>
05年11.7-10-10.7-10.2-11.4(21.7-21.6) 前半3F32.4
今年11.8-9.9-10.4-10.5-11.6(21.7-22.1) 前半3F32.1
今年の場合は、サープラスシンガー、クーヴェルチュール、エムオーウイナー、エイムアットビップが飛ばして先行争いを繰り広げ、最初の2Fのタイムは日本レコードを記録したカルストンライトオの02年のものを上回り、3F目でも0.1秒しか違わない。カルストンライトオとの実力差を考えると、今回の先行勢4頭にとってはかなり厳しいペース。当然その後は失速し、後続の馬に差し切られるという展開になってしまった。
この展開で逃げたので、最後はさすがに失速してしまったものの、4着に入る粘りを見せたサープラスシンガーはかなり力があると言える。
テンから飛ばせるスピードは、むしろコーナーがある1200m戦向きだろう。
このサープラスシンガーとは対照的に、1〜3着馬はともに前半で脚をタメれたことが好走の要因。
2着に入ったシンボリグランは、前半置かれ気味ながら後半徐々に加速し、ゴール前で強襲した。元来、不器用なタイプでこれまでコーナーのあるレースでは最後に脚を余してしまうようなレースが度々あったが、器用さを要求されない直線競馬で力を出し切ることができた。
コーナーのあるレースでは、どうしてもコーナーでの立ち回りや、瞬時に加速する器用さが要求されるが、直線競馬では、助走をするように徐々に加速できるので、シンボリグランのような不器用なタイプの馬でも力を発揮できる。
メジロダーリング(01年1着)、シンボリスウォード(01年2着)、ブレイクタイム(02年2着)、シンボリグラン(08年2着)とDanzig系の馬がこのレースで好成績を収めているのもそういった要因が多分に絡んでいるのだろう。
Danzig系の馬は、その他にもマグナーテン、ビコーペガサス、アグネスワールド、ファインモーション等どちらかと言うと、相手のペースに合わせて器用に立ち回ることは苦手だが、自分のペースで走ることができれば爆発的な力を発揮するタイプの馬が多い。
Danzig直仔のステキシンスケクンなんかもその例外ではない。
06年のスプリンターズSでも楽に先行できたように、元来から高いスピード能力を持っているこの馬も今回は「みんなが外へ来るから、行きたいポジションを取れなかった」とユーイチが語ったように、騎手同士の駆け引きに敗れ6着に終わったと言える。
気性的に自分のペースで走れないと力を発揮できないので、非常に当てにしづらいタイプの馬であるが、今後も嵌ったら怖い存在。
同じDanzig直仔のビコーペガサスなんかと同様にマイルまでこなせるスプリンターと言えるこの馬は、基本的にはスプリント戦がベストだろう。
3着アポロドルチェは、序盤から追い通しながらメンバー中最速の上がりで伸びて3着を確保。
「周りのスピードに驚いた。ここまで置かれるとは思っていなかったよ。さすがに忙しかったね。でも最後まで良く伸びてくれたし、ここを使ったことがこの後いい刺激になってくれれば」と勝浦がコメントしたように、結果的に序盤で置かれたことが好走に繋がった。逆にもしテンから飛ばせるようなスピードがこの馬にあったら、速い流れに巻き込まれて最後に失速していただろう。
その典型が1番人気に支持されたエイムアットビップ。
「最初は楽についていけたが途中で反応がなくなり一番早く手が動いてしまった。初めての直線競馬に馬が戸惑っている感じだった。先行力があるだけに残念な結果。直線競馬では持ち味が出ないのかも…」と吉田隼騎手。
このメンバーでも楽に先行できるスピードが逆に仇となってしまった。
直線競馬ではコーナーを利用して息を入れることができないので、いくらスピードがあってもガンガン行きたがってしまうような気性の馬は直線競馬には向かない。そういうタイプの馬は、直線競馬では自滅の道を突き進むだけとなる。
楽に先行できるスピードがあるので、決して1000mが短いという訳ではなく、他馬と併走してもムキにならず、序盤に力をセーブできるようになれば、直線競馬でも対応できるようになるだろう。
今年の夏のスピード比べ。勝ち時計は54.2秒だった。決してレベルが高いとは言えない。
もし、サチノスイーティーが出ていれば・・とつい考えてしまう。
サチノスイーティーは、昨年のこのレースで各馬横一線となったガチンコ勝負の限界を超えるようなスピード比べに巻き込まれ、「展開のアヤ」で5着に敗れてしまったが、この馬のペースで走り切ることができれば今年も好勝負できていただろう。
サチノスイーティー、早く復帰してもらいたいものだ。
時間とはおもしろいものである。
同じ1分でも普段の1分と、手に汗を握りレースを凝視しているときの時間の感覚はまったく異なる。
1分にも満たない短い時間のレースでも見どころはたくさんあり、奥が深く単純なものではない。
サチノスイーティーのあの激走からもう1年が経つ。
早いものだ・・
歳を重ねる度に、1年という歳月が早く感じる。
時間とはおもしろいものだ。
2008年07月14日(月) 22:55
サマースプリントシリーズ第1戦「函館スプリントS」は、断トツの1番人気に支持されたキンシャサノキセキが人気に応える圧倒的な強さで重賞初制覇を果たした。
高松宮記念2着の実力は、ここではモノが違った。
スタートダッシュを決めると、「行く馬を行かせて好位で」という作戦通り、すぐさま3番手につける。ゴスホークケン、ウエスタンビーナスの激しいハナ争いによって前半3ハロン32秒8という速い流れになったが、「手応えが良すぎて抑えるのに苦労した」と岩田がレース後に語った程の抜群の行きっぷり。もう抑え切れないという程の手応えで4コーナーから直線へ。内のゴスホークケンと外ウエスタンビーナスの間にちょうど1頭分開いたスペースに突っ込みゴーサインを送ると、あっと言う間に抜け出し、残り50mでは後続に3馬身差。ここで完全に1頭になったことで気を抜いてしまったため、追い込んだトウショウカレッジに首差まで詰め寄られたが、内容的には格の違いを見せつける完勝だった。
1分8秒4(良)のコースレコードタイで、まさに貫禄の勝利。
重賞挑戦10戦目にして、ようやく待望のタイトルを手に入れた。
これまでオープン特別こそ3勝してはいたものの、重賞ではなかなか結果の出ないレースが続いたこの馬に対し、「この馬はもういい。重賞では用はない」などという呆れるほどの短絡的な見方さえごく一部にあった。
だが、この馬がしばらく低迷が続いたのは、決して能力が劣っていたという訳ではなかった。
高い能力がありながら出世を遅らせていた原因が精神面の幼さ。
レースでは毎度のように、引っ掛かったり、出遅れたりと、まともに走れないことが多かった。
昨秋のスプリント重賞・セントウルSでもスタートで出遅れ、その後は行きたがってしまい、早めに動いて直線で伸びを欠くというチグハグな競馬で3着。
スプリント戦でも引っ掛かってしまうような高いスピード能力をレースでいかに上手く活かすことができるか。これがこの馬の課題だった。
高松宮記念前の堀師の「とにかく折り合いがカギ。3角まで抑えが利けばチャンスは十分にある」というコメントがそれを如実に象徴している。
「スプリンターとしての能力はある。スピードがあるから自分から行くことができるからね」とは、今回のレース前の岩田のコメント。
昨秋のセントウルS以来のスプリント戦への出走となった前走の高松宮記念でも、中間に挫石のアクシデントがあり、決して万全の出来とは言えない中での2着。
この馬のスピード能力は以前からかなり高いものがあったが、3歳時と4歳時に出走したスプリント戦はセントウルSの一戦のみ。
もっと早くからスプリント路線に的を絞っていたら、とっくに重賞の一つや二つは勝っていただろう。
今後は、一度叩いてスプリンターズSに向かう予定。
精神面が成長し、折り合いがつくようになれば、マイル戦も十分対応可能だろうが、1200mでも行きたがっている現状では、やはりベストはスプリント戦。
道中に行きたがってしまう、抜け出したときに気を抜いてしまう等、まだ課題が残っている馬だけに、悲願のGI制覇に向けて、まずスプリント戦でスキのない安定したレースができるようになる必要がある。
精神面が成長し、そういった課題が解消されたときに、この馬もいよいよ本格化を迎えたと言えるのだろう。
2着トウショウカレッジは今回もスタートで行き脚がつかず後方からの競馬。インコースでロスなく運び、直線で猛追したが、クビ差及ばなかった。
スプリント戦では出遅れ癖はかなり痛い。
それが、好走か大凡走かという波の激しい成績の一因にもなっている。
出遅れ癖が解消されない限り、今後も人気になったときは買いづらい。
3着キングストレイルは、直線に入ったところで前が塞がり、追い出せなかった。
だが、その不利がなくとも上位2頭にどこまで迫れたか。
4着プレミアムボックスもスタートでやや出負け。道中は、トウショウカレッジとほぼ同じ位置にいたが、直線の伸び脚で劣った。
高松宮記念2着の実力は、ここではモノが違った。
スタートダッシュを決めると、「行く馬を行かせて好位で」という作戦通り、すぐさま3番手につける。ゴスホークケン、ウエスタンビーナスの激しいハナ争いによって前半3ハロン32秒8という速い流れになったが、「手応えが良すぎて抑えるのに苦労した」と岩田がレース後に語った程の抜群の行きっぷり。もう抑え切れないという程の手応えで4コーナーから直線へ。内のゴスホークケンと外ウエスタンビーナスの間にちょうど1頭分開いたスペースに突っ込みゴーサインを送ると、あっと言う間に抜け出し、残り50mでは後続に3馬身差。ここで完全に1頭になったことで気を抜いてしまったため、追い込んだトウショウカレッジに首差まで詰め寄られたが、内容的には格の違いを見せつける完勝だった。
1分8秒4(良)のコースレコードタイで、まさに貫禄の勝利。
重賞挑戦10戦目にして、ようやく待望のタイトルを手に入れた。
これまでオープン特別こそ3勝してはいたものの、重賞ではなかなか結果の出ないレースが続いたこの馬に対し、「この馬はもういい。重賞では用はない」などという呆れるほどの短絡的な見方さえごく一部にあった。
だが、この馬がしばらく低迷が続いたのは、決して能力が劣っていたという訳ではなかった。
高い能力がありながら出世を遅らせていた原因が精神面の幼さ。
レースでは毎度のように、引っ掛かったり、出遅れたりと、まともに走れないことが多かった。
昨秋のスプリント重賞・セントウルSでもスタートで出遅れ、その後は行きたがってしまい、早めに動いて直線で伸びを欠くというチグハグな競馬で3着。
スプリント戦でも引っ掛かってしまうような高いスピード能力をレースでいかに上手く活かすことができるか。これがこの馬の課題だった。
高松宮記念前の堀師の「とにかく折り合いがカギ。3角まで抑えが利けばチャンスは十分にある」というコメントがそれを如実に象徴している。
「スプリンターとしての能力はある。スピードがあるから自分から行くことができるからね」とは、今回のレース前の岩田のコメント。
昨秋のセントウルS以来のスプリント戦への出走となった前走の高松宮記念でも、中間に挫石のアクシデントがあり、決して万全の出来とは言えない中での2着。
この馬のスピード能力は以前からかなり高いものがあったが、3歳時と4歳時に出走したスプリント戦はセントウルSの一戦のみ。
もっと早くからスプリント路線に的を絞っていたら、とっくに重賞の一つや二つは勝っていただろう。
今後は、一度叩いてスプリンターズSに向かう予定。
精神面が成長し、折り合いがつくようになれば、マイル戦も十分対応可能だろうが、1200mでも行きたがっている現状では、やはりベストはスプリント戦。
道中に行きたがってしまう、抜け出したときに気を抜いてしまう等、まだ課題が残っている馬だけに、悲願のGI制覇に向けて、まずスプリント戦でスキのない安定したレースができるようになる必要がある。
精神面が成長し、そういった課題が解消されたときに、この馬もいよいよ本格化を迎えたと言えるのだろう。
2着トウショウカレッジは今回もスタートで行き脚がつかず後方からの競馬。インコースでロスなく運び、直線で猛追したが、クビ差及ばなかった。
スプリント戦では出遅れ癖はかなり痛い。
それが、好走か大凡走かという波の激しい成績の一因にもなっている。
出遅れ癖が解消されない限り、今後も人気になったときは買いづらい。
3着キングストレイルは、直線に入ったところで前が塞がり、追い出せなかった。
だが、その不利がなくとも上位2頭にどこまで迫れたか。
4着プレミアムボックスもスタートでやや出負け。道中は、トウショウカレッジとほぼ同じ位置にいたが、直線の伸び脚で劣った。
2008年06月14日(土) 23:34
1番人気がコロコロと入れ替わり、混戦模様と目された今年の安田記念。
前週のダービーの回顧で指摘したように、インコースが伸びるという傾向が続く今の東京コース。開催が進んだことで、さすがに3〜4コーナーの内ラチ沿いは荒れていたが、その傾向はまだ続いていた。
ダービーでは、ディープスカイの絶対的な能力の高さに加え、四位の冷静で大胆な瞬時の判断が勝利に貢献した。
「外が伸びないのは、それまでのレースで分かっていたが、内がごちゃついていたし、せっかくのダービーで不利を受けて終わるのはバカらしいから」と敢えて外に持ち出した四位の「瞬時の判断」を、岡部幸雄氏もギャロップ誌上で賞賛していた。
そして、ダービーとは距離、通ったコースは違えど、この安田記念の覇者も騎手の冷静、緻密かつ大胆な騎乗に導かれた絶対的な能力を持つ馬だった。
<緻密な分析によって実現した好騎乗>
歴史的名牝ウオッカの鞍上に指名され、この一戦に並々ならぬ決意で挑んだ岩田。
レース前夜には、ウオッカの過去全レースのVTRを何度も見て、レースの作戦を立てた。さらに当日は芝の状態を入念にチェック。安田記念の直前の10Rでは、最内を逃げて、インコースが伸びることを再確認した。
「見た目以上に内が硬かった。馬場を見てもう内しか通る気はなかった。内枠なら先行と最初から決めていた」とは岩田の言葉。もう腹は決まっていた。
そうするのが好きとかスタイルとかそういった子供じみた低レベルな考えからではなく、週末2日間の騎乗を通じ、念入りに馬場状態を見極めた岩田の判断だった。
「内は外より伸びるってジョッキーと話をしていました」とは角居師。
開催が進んだ今の東京コースは、3〜4コーナーの内ラチ沿いはさすがに馬場が荒れているが、そのラチから1頭分だけ芝が生えている部分があり、またインコースの馬場は固くなっていた。そこを狙った岩田の騎乗は、内枠に入ったことを存分に活かした好騎乗だった。
このレースを勝つためにはどうしたらいいかという事を様々な要因から分析し、作戦を立て、最高の仕事をした岩田。
騎手としては当然の事ながら、まさに“一戦必勝”を徹底的に追い求めた姿勢が好騎乗を生んだ。
<持ち前の爆発力が蘇ったウオッカ>
内枠から好スタートを決めたウオッカ。
ここで、戦前の予想通りコンゴウリキシオーがハナを主張。
外枠のアルマダが好ダッシュから競るように行く構えを見せ、藤田が懸命に押している。
その一方で、ウオッカと岩田は楽に先頭に立つ勢い。
元来、行きたがる気性のウオッカであるが、この行きっぷりの良さは、心身の充実の表れなのだろう。
岩田は、そのウオッカをなだめるように、3番手に控える。
先頭のコンゴウリキシオーは、ほぼ正確に11.5秒前後を刻むこの馬らしいワンペースの逃げで、後続を3馬身程引き離して逃げる。
昨年より0.4秒遅い57.9秒で1000mを通過。
昨年とは馬場状態が違うので、この通過タイムだけでは単純に比較できないが、前後半のラップでは、今年が(34.6-34.8)、昨年が(34.1-34.8)。
コンゴウリキシオーにとって、今年は昨年より楽なペースの逃げ。
そのコンゴウリキシオーから離れた後方にいたグループはさらに楽なペース。
ウオッカは、この流れにうまく乗り、きちんと折り合っていた。
つまり、このレースにおいては、岩田の選択した先行策がピタリと的中した。
そして、直線もレース前の作戦通り「伸びるインコース」へとウオッカを導く。
後は、もう、ウオッカの独壇場。
岩田の振り上げるムチなど意味も無い程の凄まじい伸び脚で後続を一気に突き放す。
岩田流の表現では、「チョー速え〜!!抜け出すときの感触はバキューン!!って感じ」
彼は、ウオッカの凄まじい「瞬発力」、「爆発力」を表現したかったのだろう。
それこそ、ウオッカの「凄さ」であり、「持ち味」でもある。
競馬評論家の丹下日出男氏の評論にもあったが、
ウオッカのラスト2Fの推定ラップが10秒9-11秒7。
岩田が表現した「バキューン!!」は、この1ハロン推定10秒9という瞬発力を指すのだろう。
ウオッカのラスト2Fの推定ラップを見ても分かるように、さすがにこの凄まじい「爆発力」を持続することは難しい。その爆発の威力が凄まじいからこそ生じる代償とも言える。
この類まれな瞬発力をどこで使うか、またそれを爆発させるために、それまでにいかにうまく脚をタメられるか、そしてどうやって少しでも持続させられるかということが今後もウオッカに騎乗する上でポイントになってくる。
特に、距離が延びた場合、あるいは相手関係が強化された場合に、それがより重要になってくる。
鋭い伸び脚で追い込みながら最後にパタッと止まった昨年のジャパンCでも、岡部氏が「あまりに瞬発力がありすぎて、一気に脚を使うから、その反動で止まってしまう」と評していたように、類まれな「瞬発力」があるだけに、使いどころの難しいウオッカの「瞬発力」、「爆発力」をどう活かすか、さらにかかり癖のあるウオッカをどう御すかということが距離の延びた場合、相手関係が強化された場合の課題となる。
実際、今回のレースでも、ウオッカの上がり3ハロンのタイムは抜けて速いという訳ではなかった。エアシェイディと同タイム、スズカフェニックスと0.1秒差だった。ウオッカが抜けて速かったのは、ラスト2F目に記録した10.9秒というタイムなのだろう。持ち前の瞬発力で一気に抜け出すと、後はそのリードを守るだけ。だからこそ、今回のレースでは、岩田の位置取り、コース取りの巧さが効果的だった。
今回のウオッカの素晴らしい走りを見て、単純に考えてしまうと、「こういう勝ち方が出来ればもうこれからは敵無しだ」、「マイルならまた今回のような乗り方でいい」ということになるのだろうが、そう短絡的にはいかない。
前述したウオッカの持ち味である「瞬発力」、「爆発力」を活かす乗り方をするには、当然のように、枠順、展開などによって臨機応変に変えていかなければならない。
例えば、同じ東京マイルでも今回とはまったく異なる条件、外枠に入った場合やハイペースになった場合などでは、また違った乗り方が必要になってくる。
「内枠なら先行と最初から決めていた」という岩田のコメントからも推測できるように、もし外枠だったら、岩田も違った乗り方を考えていたのだろう。
外枠だったらすんなりと折り合えていなかったかもしれない。外枠では行きたがる馬に対し、前に壁を作ってなだめるという乗り方がしづらいからである。
また、もしハイペースになっていたら、先行してあれだけの「瞬発力」を繰り出せたかも分からない。
実際、ドバイでのレースがそうだった。
それがまたウオッカの難しさでもある。
柏木集保氏もウオッカをこう評している
「次にまた先行策を取り入れたからといって、それが成功するとはとても思えないのがウオッカの難しさだろう」
私は、レースを分析する際、評論家の見解には、謙虚に耳を傾け、そして参考にしている。
中には、ど素人でありながら、あたかも自分は競馬に詳しいんだと言わんばかりに、あの評論家はこう言っているがあれは違うと、評論家の見解に対し、わざわざ名指しして異を唱える者もいるが、大体その意見は的外れなものばかりである。
やはり、我々一般の競馬ファンは、日々競馬に関わる仕事に従事している人の見解には謙虚な姿勢で耳を傾けるべきだろう。
またそれが自分にとって益となる。
<超一流馬ウオッカ>
レース後、興奮気味に語る岩田の表情が、「超一流」の能力を持つウオッカから受けた衝撃を物語っていた。
また、彼は、ウオッカをあの世界的な名馬アドマイヤムーンと同等だと絶賛した。
紛れもなく、ウオッカは、「超一流馬」であり、「歴史に残る名牝」である。
それは、仮にウオッカが今後まったく勝てなくても変わりはない。
「超一流馬」と認めるというのはそういうものである。
少し負けが続いたらからといって「一流馬」に評価を下げたり、また強い勝ち方をしたら、再度「超一流馬」へ格上げといったような類のものではない。
後続を3馬身ぶっちぎった破格の強さ。
念入りに作戦を立て、ウオッカの能力を十分に発揮した岩田の好騎乗による部分もあるが、それはウオッカ自身の絶対的な能力の高さがなければ成し得ない決定的な着差でもある。
誰の目にも明らかだったように、ウオッカの状態は前走から良化していた。
とにかく、これが大きかった。
ウオッカ本来の力が出せれば、今回のメンバーでは力が抜けていることが証明された結果だった。
私は、前走ヴィクトリアマイルの回顧の中で、“超一流馬”ウオッカの巻き返しはあると書いていたが、早速その力を証明してくれたわけだ。
ダービーの後は、思うような結果の出ないレースが続いていたウオッカに対し、その結果だけを単純に見て、ウオッカは、「成長力に乏しい」、「超一流馬というほどではない」などという声が上がっていた。
あげくの果てには、俺はもうこの早い段階から見切っていたと言わんばかりに是見よがしに「秋華賞でウオッカの能力に限界を感じた」などというとんでもない見方さえあった。
1回のレースだけを見て、短絡的にこのような誤った見方をしてしまうのは、おそらく単純にその結果だけを見て、馬を機械のように見てしまうからなのであろう。
馬を見る目がないと言うより、そもそも馬そのものを見ていないのかもしれない。
再三再四、書いているが、馬は毎回力を出し切ってくれるとは限らない。
ウオッカの場合も、宝塚記念での敗戦を境にリズムが狂ってしまったのか、レースで思うように力を出し切れなくなっていただけで、決して能力に陰りが出たという訳ではなかった。
昨夏の右後肢の蹄球炎、エ女王杯前の右寛ハ行と、立て続けに肉体的なアクシデントにも見舞われ順調さを欠き、そして、精神面の問題から生じるのであろう、折り合いに対する不安もあった。
機械のように物理的に故障を治しさえすれば、全能力が出せるようになるとは限らないのが生きた競走馬の難しさ。
前述のように、単純に結果だけを見てしまうと、例えば、ダービーで大敗したサクセスブロッケンをダート馬だ!とすぐに決め付けてしまう。
だが、ダービーの回顧でも書いたが、サクセスブロッケンの大敗の原因として、芝適性云々の前に初めて経験する戸惑いや恐怖といった気持ちの部分にも目を向けなければならない。
そのことは、岡部幸雄氏もギャロップ誌の中で指摘していた。
生きた競走馬が走る競馬は、机上の論理で簡単に能力を数値化して予想が当たる程単純ではない。その奥の深さがまた競馬のおもしろさでもある。
<2着アルマダ>
注目の香港勢は大きく明暗を分けた。5番人気のアルマダが2着に入った。
アルマダは、好スタートからハナに立つ勢いだったが、コンゴウリキシオーの藤田が何が何でもという感じでハナを主張したので、控えて2番手。この位置につけたことで、外枠スタートながらインコースをロスなく回れた。さらにコンゴウリキシオーからは間隔を空け、マイペースをキープしたことが最後の踏ん張りに繋がった。
「4コーナーで荒れた馬場を気にしていたので、直線は馬場のいいところに出す必要があった」とのホワイト騎手のコメント通り、直線は迷わずに「伸びる内」へと導いた。後続の追撃を振り切ることができたのは、これまで何度も東京コースで騎乗し、このコースをよく知るホワイト騎手の好騎乗によるところが大きい。
これまでのコース経験に加え、ホワイト騎手は、土曜日から何レースも騎乗機会に恵まれ、今の東京コースの「インコースが伸びる」という芝の特徴を掴むことができたことも好騎乗に繋がった。
位置取り、ペース、コース取りなど、ホワイト騎手の東京コースでの経験に基づく見事な騎乗がアルマダに2着という好結果をもたらした。
混戦の2着争いでは、その位置取り、コース取りが大きく左右した。
4着エアシェイディ、5着スズカフェニックスは外から追い上げたが、アルマダに1馬身程届かず。外枠スタートから後方に下げ、道中は外を回り、直線も内ほど伸びない外に出したことが響いた。両馬とも枠順、展開、馬場状態に恵まれれば、2着までならあっただろう。
また、エアシェイディは、レース前のイレ込みも影響した。
レース前に緊張してしまい、本来の力をレースで発揮できないことがこれまでも多々あったが、既に7歳になりながら、依然、精神面の弱さが改善されていないようだ。
今回も馬房からかなり緊張していたとのこと。
以前から言われているように素質的にはGI級のものを持っているが、そういった精神面の課題が解消されないうちはGI云々言えない。
逆に、精神面が成長すれば、GIレースでも勝ち負けになるはず。
後藤が話したように、「この馬は、元々、叩いてよくなるタイプ」
約3ヶ月ぶりの実戦でありながらの4着という結果は、健闘したとも言える。
6着のコンゴウリキシオーは、本来の出来にはない状態で、よく頑張った。
この馬の状態を考え、昨年ほど積極的に飛ばさず、抑え気味に逃げた藤田の好騎乗も大きい。
昨年のこのレースで2着に入って以降は、芝で結果が出ていないが、体調不良が原因で、決して力が衰えているとわけではないだろう。
年齢に関係なくありがちな、激走の後の反動が長引いているのか。
Northern Dancerの血を主体とした血統背景からは、6歳でもまだまだ十分やれるはずで、今回をきっかけにもう一花咲かせて欲しいところ。
スーパーホーネットは最終的に1番人気になったが、その期待を大きく裏切る8着。やや出負けしたが、致命的なほどのものではなかった。直線で馬群の中から伸びかけたが、残り200mで止まった。「あと1Fで脚が上がって…」とは藤岡の弁。前走で見せた末脚を発揮できずに終わった。
前走後は、美浦に滞在し、馬体回復を狙ったが、増えたのは4キロだけ。
「美浦に滞在させて結果を出そうと頑張ったんですが、調教師の腕が悪かったんでしょうね。もう一度やり直します」と矢作師が自嘲気味に語ったように、ローテーションを含めた臨戦過程にも問題があったかもしれない。
輸送に不安のある馬を短期間で2度の輸送を強いたローテーションはやや無理があったか。結果、前走では馬体が減り、美浦滞在という苦肉の策を取らざるを得なくなってしまった。
圧倒的な強さで完勝した前走の後、美浦滞在という異例の策にも「準備万端。これで死角はほとんどなくなった」という楽観的な声がごく一部で上がっていたが、そもそも美浦滞在という選択は、そうしたくてそうしたのではなく、そうせざるを得ない状況に追い込まれてしまった苦肉の策だったわけで、楽観視できる材料などではなかった。馬体重こそ回復したが、慣れない環境に日々溜まっていたストレスが今回の大敗の一因にあったかもしれない。
いづれにせよ、輸送云々言っているような段階では、真の強さがあるとは言えない。陣営に苦肉の策を取らせたこと自体が、この馬の脆さを表している。
この馬には、輸送にも動じない強い精神力を身に付けてもらいたい。
「秋は関西(マイルCS)なのでまた頑張ります」という矢作師が言うように、輸送に不安のあるスーパーホーネットにとって、マイルCSは今回より都合のいい舞台。秋こそ初GI制覇を期待したい。
3番人気に推されたグッドババは、15キロの馬体減に加え、イレ込みと発汗が酷く、レース前にすでに戦いが終わっていた。万全の体調ではなかったようだ
前週のダービーの回顧で指摘したように、インコースが伸びるという傾向が続く今の東京コース。開催が進んだことで、さすがに3〜4コーナーの内ラチ沿いは荒れていたが、その傾向はまだ続いていた。
ダービーでは、ディープスカイの絶対的な能力の高さに加え、四位の冷静で大胆な瞬時の判断が勝利に貢献した。
「外が伸びないのは、それまでのレースで分かっていたが、内がごちゃついていたし、せっかくのダービーで不利を受けて終わるのはバカらしいから」と敢えて外に持ち出した四位の「瞬時の判断」を、岡部幸雄氏もギャロップ誌上で賞賛していた。
そして、ダービーとは距離、通ったコースは違えど、この安田記念の覇者も騎手の冷静、緻密かつ大胆な騎乗に導かれた絶対的な能力を持つ馬だった。
<緻密な分析によって実現した好騎乗>
歴史的名牝ウオッカの鞍上に指名され、この一戦に並々ならぬ決意で挑んだ岩田。
レース前夜には、ウオッカの過去全レースのVTRを何度も見て、レースの作戦を立てた。さらに当日は芝の状態を入念にチェック。安田記念の直前の10Rでは、最内を逃げて、インコースが伸びることを再確認した。
「見た目以上に内が硬かった。馬場を見てもう内しか通る気はなかった。内枠なら先行と最初から決めていた」とは岩田の言葉。もう腹は決まっていた。
そうするのが好きとかスタイルとかそういった子供じみた低レベルな考えからではなく、週末2日間の騎乗を通じ、念入りに馬場状態を見極めた岩田の判断だった。
「内は外より伸びるってジョッキーと話をしていました」とは角居師。
開催が進んだ今の東京コースは、3〜4コーナーの内ラチ沿いはさすがに馬場が荒れているが、そのラチから1頭分だけ芝が生えている部分があり、またインコースの馬場は固くなっていた。そこを狙った岩田の騎乗は、内枠に入ったことを存分に活かした好騎乗だった。
このレースを勝つためにはどうしたらいいかという事を様々な要因から分析し、作戦を立て、最高の仕事をした岩田。
騎手としては当然の事ながら、まさに“一戦必勝”を徹底的に追い求めた姿勢が好騎乗を生んだ。
<持ち前の爆発力が蘇ったウオッカ>
内枠から好スタートを決めたウオッカ。
ここで、戦前の予想通りコンゴウリキシオーがハナを主張。
外枠のアルマダが好ダッシュから競るように行く構えを見せ、藤田が懸命に押している。
その一方で、ウオッカと岩田は楽に先頭に立つ勢い。
元来、行きたがる気性のウオッカであるが、この行きっぷりの良さは、心身の充実の表れなのだろう。
岩田は、そのウオッカをなだめるように、3番手に控える。
先頭のコンゴウリキシオーは、ほぼ正確に11.5秒前後を刻むこの馬らしいワンペースの逃げで、後続を3馬身程引き離して逃げる。
昨年より0.4秒遅い57.9秒で1000mを通過。
昨年とは馬場状態が違うので、この通過タイムだけでは単純に比較できないが、前後半のラップでは、今年が(34.6-34.8)、昨年が(34.1-34.8)。
コンゴウリキシオーにとって、今年は昨年より楽なペースの逃げ。
そのコンゴウリキシオーから離れた後方にいたグループはさらに楽なペース。
ウオッカは、この流れにうまく乗り、きちんと折り合っていた。
つまり、このレースにおいては、岩田の選択した先行策がピタリと的中した。
そして、直線もレース前の作戦通り「伸びるインコース」へとウオッカを導く。
後は、もう、ウオッカの独壇場。
岩田の振り上げるムチなど意味も無い程の凄まじい伸び脚で後続を一気に突き放す。
岩田流の表現では、「チョー速え〜!!抜け出すときの感触はバキューン!!って感じ」
彼は、ウオッカの凄まじい「瞬発力」、「爆発力」を表現したかったのだろう。
それこそ、ウオッカの「凄さ」であり、「持ち味」でもある。
競馬評論家の丹下日出男氏の評論にもあったが、
ウオッカのラスト2Fの推定ラップが10秒9-11秒7。
岩田が表現した「バキューン!!」は、この1ハロン推定10秒9という瞬発力を指すのだろう。
ウオッカのラスト2Fの推定ラップを見ても分かるように、さすがにこの凄まじい「爆発力」を持続することは難しい。その爆発の威力が凄まじいからこそ生じる代償とも言える。
この類まれな瞬発力をどこで使うか、またそれを爆発させるために、それまでにいかにうまく脚をタメられるか、そしてどうやって少しでも持続させられるかということが今後もウオッカに騎乗する上でポイントになってくる。
特に、距離が延びた場合、あるいは相手関係が強化された場合に、それがより重要になってくる。
鋭い伸び脚で追い込みながら最後にパタッと止まった昨年のジャパンCでも、岡部氏が「あまりに瞬発力がありすぎて、一気に脚を使うから、その反動で止まってしまう」と評していたように、類まれな「瞬発力」があるだけに、使いどころの難しいウオッカの「瞬発力」、「爆発力」をどう活かすか、さらにかかり癖のあるウオッカをどう御すかということが距離の延びた場合、相手関係が強化された場合の課題となる。
実際、今回のレースでも、ウオッカの上がり3ハロンのタイムは抜けて速いという訳ではなかった。エアシェイディと同タイム、スズカフェニックスと0.1秒差だった。ウオッカが抜けて速かったのは、ラスト2F目に記録した10.9秒というタイムなのだろう。持ち前の瞬発力で一気に抜け出すと、後はそのリードを守るだけ。だからこそ、今回のレースでは、岩田の位置取り、コース取りの巧さが効果的だった。
今回のウオッカの素晴らしい走りを見て、単純に考えてしまうと、「こういう勝ち方が出来ればもうこれからは敵無しだ」、「マイルならまた今回のような乗り方でいい」ということになるのだろうが、そう短絡的にはいかない。
前述したウオッカの持ち味である「瞬発力」、「爆発力」を活かす乗り方をするには、当然のように、枠順、展開などによって臨機応変に変えていかなければならない。
例えば、同じ東京マイルでも今回とはまったく異なる条件、外枠に入った場合やハイペースになった場合などでは、また違った乗り方が必要になってくる。
「内枠なら先行と最初から決めていた」という岩田のコメントからも推測できるように、もし外枠だったら、岩田も違った乗り方を考えていたのだろう。
外枠だったらすんなりと折り合えていなかったかもしれない。外枠では行きたがる馬に対し、前に壁を作ってなだめるという乗り方がしづらいからである。
また、もしハイペースになっていたら、先行してあれだけの「瞬発力」を繰り出せたかも分からない。
実際、ドバイでのレースがそうだった。
それがまたウオッカの難しさでもある。
柏木集保氏もウオッカをこう評している
「次にまた先行策を取り入れたからといって、それが成功するとはとても思えないのがウオッカの難しさだろう」
私は、レースを分析する際、評論家の見解には、謙虚に耳を傾け、そして参考にしている。
中には、ど素人でありながら、あたかも自分は競馬に詳しいんだと言わんばかりに、あの評論家はこう言っているがあれは違うと、評論家の見解に対し、わざわざ名指しして異を唱える者もいるが、大体その意見は的外れなものばかりである。
やはり、我々一般の競馬ファンは、日々競馬に関わる仕事に従事している人の見解には謙虚な姿勢で耳を傾けるべきだろう。
またそれが自分にとって益となる。
<超一流馬ウオッカ>
レース後、興奮気味に語る岩田の表情が、「超一流」の能力を持つウオッカから受けた衝撃を物語っていた。
また、彼は、ウオッカをあの世界的な名馬アドマイヤムーンと同等だと絶賛した。
紛れもなく、ウオッカは、「超一流馬」であり、「歴史に残る名牝」である。
それは、仮にウオッカが今後まったく勝てなくても変わりはない。
「超一流馬」と認めるというのはそういうものである。
少し負けが続いたらからといって「一流馬」に評価を下げたり、また強い勝ち方をしたら、再度「超一流馬」へ格上げといったような類のものではない。
後続を3馬身ぶっちぎった破格の強さ。
念入りに作戦を立て、ウオッカの能力を十分に発揮した岩田の好騎乗による部分もあるが、それはウオッカ自身の絶対的な能力の高さがなければ成し得ない決定的な着差でもある。
誰の目にも明らかだったように、ウオッカの状態は前走から良化していた。
とにかく、これが大きかった。
ウオッカ本来の力が出せれば、今回のメンバーでは力が抜けていることが証明された結果だった。
私は、前走ヴィクトリアマイルの回顧の中で、“超一流馬”ウオッカの巻き返しはあると書いていたが、早速その力を証明してくれたわけだ。
ダービーの後は、思うような結果の出ないレースが続いていたウオッカに対し、その結果だけを単純に見て、ウオッカは、「成長力に乏しい」、「超一流馬というほどではない」などという声が上がっていた。
あげくの果てには、俺はもうこの早い段階から見切っていたと言わんばかりに是見よがしに「秋華賞でウオッカの能力に限界を感じた」などというとんでもない見方さえあった。
1回のレースだけを見て、短絡的にこのような誤った見方をしてしまうのは、おそらく単純にその結果だけを見て、馬を機械のように見てしまうからなのであろう。
馬を見る目がないと言うより、そもそも馬そのものを見ていないのかもしれない。
再三再四、書いているが、馬は毎回力を出し切ってくれるとは限らない。
ウオッカの場合も、宝塚記念での敗戦を境にリズムが狂ってしまったのか、レースで思うように力を出し切れなくなっていただけで、決して能力に陰りが出たという訳ではなかった。
昨夏の右後肢の蹄球炎、エ女王杯前の右寛ハ行と、立て続けに肉体的なアクシデントにも見舞われ順調さを欠き、そして、精神面の問題から生じるのであろう、折り合いに対する不安もあった。
機械のように物理的に故障を治しさえすれば、全能力が出せるようになるとは限らないのが生きた競走馬の難しさ。
前述のように、単純に結果だけを見てしまうと、例えば、ダービーで大敗したサクセスブロッケンをダート馬だ!とすぐに決め付けてしまう。
だが、ダービーの回顧でも書いたが、サクセスブロッケンの大敗の原因として、芝適性云々の前に初めて経験する戸惑いや恐怖といった気持ちの部分にも目を向けなければならない。
そのことは、岡部幸雄氏もギャロップ誌の中で指摘していた。
生きた競走馬が走る競馬は、机上の論理で簡単に能力を数値化して予想が当たる程単純ではない。その奥の深さがまた競馬のおもしろさでもある。
<2着アルマダ>
注目の香港勢は大きく明暗を分けた。5番人気のアルマダが2着に入った。
アルマダは、好スタートからハナに立つ勢いだったが、コンゴウリキシオーの藤田が何が何でもという感じでハナを主張したので、控えて2番手。この位置につけたことで、外枠スタートながらインコースをロスなく回れた。さらにコンゴウリキシオーからは間隔を空け、マイペースをキープしたことが最後の踏ん張りに繋がった。
「4コーナーで荒れた馬場を気にしていたので、直線は馬場のいいところに出す必要があった」とのホワイト騎手のコメント通り、直線は迷わずに「伸びる内」へと導いた。後続の追撃を振り切ることができたのは、これまで何度も東京コースで騎乗し、このコースをよく知るホワイト騎手の好騎乗によるところが大きい。
これまでのコース経験に加え、ホワイト騎手は、土曜日から何レースも騎乗機会に恵まれ、今の東京コースの「インコースが伸びる」という芝の特徴を掴むことができたことも好騎乗に繋がった。
位置取り、ペース、コース取りなど、ホワイト騎手の東京コースでの経験に基づく見事な騎乗がアルマダに2着という好結果をもたらした。
混戦の2着争いでは、その位置取り、コース取りが大きく左右した。
4着エアシェイディ、5着スズカフェニックスは外から追い上げたが、アルマダに1馬身程届かず。外枠スタートから後方に下げ、道中は外を回り、直線も内ほど伸びない外に出したことが響いた。両馬とも枠順、展開、馬場状態に恵まれれば、2着までならあっただろう。
また、エアシェイディは、レース前のイレ込みも影響した。
レース前に緊張してしまい、本来の力をレースで発揮できないことがこれまでも多々あったが、既に7歳になりながら、依然、精神面の弱さが改善されていないようだ。
今回も馬房からかなり緊張していたとのこと。
以前から言われているように素質的にはGI級のものを持っているが、そういった精神面の課題が解消されないうちはGI云々言えない。
逆に、精神面が成長すれば、GIレースでも勝ち負けになるはず。
後藤が話したように、「この馬は、元々、叩いてよくなるタイプ」
約3ヶ月ぶりの実戦でありながらの4着という結果は、健闘したとも言える。
6着のコンゴウリキシオーは、本来の出来にはない状態で、よく頑張った。
この馬の状態を考え、昨年ほど積極的に飛ばさず、抑え気味に逃げた藤田の好騎乗も大きい。
昨年のこのレースで2着に入って以降は、芝で結果が出ていないが、体調不良が原因で、決して力が衰えているとわけではないだろう。
年齢に関係なくありがちな、激走の後の反動が長引いているのか。
Northern Dancerの血を主体とした血統背景からは、6歳でもまだまだ十分やれるはずで、今回をきっかけにもう一花咲かせて欲しいところ。
スーパーホーネットは最終的に1番人気になったが、その期待を大きく裏切る8着。やや出負けしたが、致命的なほどのものではなかった。直線で馬群の中から伸びかけたが、残り200mで止まった。「あと1Fで脚が上がって…」とは藤岡の弁。前走で見せた末脚を発揮できずに終わった。
前走後は、美浦に滞在し、馬体回復を狙ったが、増えたのは4キロだけ。
「美浦に滞在させて結果を出そうと頑張ったんですが、調教師の腕が悪かったんでしょうね。もう一度やり直します」と矢作師が自嘲気味に語ったように、ローテーションを含めた臨戦過程にも問題があったかもしれない。
輸送に不安のある馬を短期間で2度の輸送を強いたローテーションはやや無理があったか。結果、前走では馬体が減り、美浦滞在という苦肉の策を取らざるを得なくなってしまった。
圧倒的な強さで完勝した前走の後、美浦滞在という異例の策にも「準備万端。これで死角はほとんどなくなった」という楽観的な声がごく一部で上がっていたが、そもそも美浦滞在という選択は、そうしたくてそうしたのではなく、そうせざるを得ない状況に追い込まれてしまった苦肉の策だったわけで、楽観視できる材料などではなかった。馬体重こそ回復したが、慣れない環境に日々溜まっていたストレスが今回の大敗の一因にあったかもしれない。
いづれにせよ、輸送云々言っているような段階では、真の強さがあるとは言えない。陣営に苦肉の策を取らせたこと自体が、この馬の脆さを表している。
この馬には、輸送にも動じない強い精神力を身に付けてもらいたい。
「秋は関西(マイルCS)なのでまた頑張ります」という矢作師が言うように、輸送に不安のあるスーパーホーネットにとって、マイルCSは今回より都合のいい舞台。秋こそ初GI制覇を期待したい。
3番人気に推されたグッドババは、15キロの馬体減に加え、イレ込みと発汗が酷く、レース前にすでに戦いが終わっていた。万全の体調ではなかったようだ
2008年06月07日(土) 23:06
皐月賞馬が不在、また皐月賞のレースレベル自体が疑問視され、今年のダービーは別路線組に注目が集まっていた。
1番人気の支持を集めたのが前走のNHKマイルCを完勝したディープスカイ。
それでも、単勝3.6倍というオッズが示すとおり、絶対的な本命というわけではなかった。距離適性に対する疑問と中2週のローテーションへの不安がそれほど強く推せない要因となっていた。
2番人気には、マイネルチャールズが単勝6.1倍とやや離れて続いた。
1番人気に支持された皐月賞では、4着に敗れたが、脚を余した感があり、皐月賞組ではナンバーワンの実力という見方だった。
そして、3番人気には混戦ダービーを象徴するように芝初挑戦となるサクセスブロッケン。ダートでの圧倒的な強さと血統的に芝でも問題ないという期待だった。
4番人気も、皐月賞組ではないアドマイヤコマンド。前走で青葉賞を制した勢いと上昇度が買われた。
このレースのポイントのひとつに馬場状態があった。
前日の降雨の影響により重馬場で始まったこの日の東京開催。
幸い、この日は快晴となり、メインレースまでにどの程度馬場状態が回復するかという点も注目を集めた。
競馬の祭典ダービーは良馬場で走らせたいというファンの願いが通じたのか、馬場は予想以上に急速に回復し、ダービー前の9レースでは良馬場となった。
馬場状態を推し量る上で、ダービー前に行われた芝の2レースは参考になった。
この2レースをそれぞれ勝った馬は、ともにインコースを走り切った馬だった。
勝った馬に騎乗していたのは、それぞれユタカとノリという日本を代表する名手であり、策士だった。
特に、ダービー前の9レースでは、ユタカが巧みにインコースからスルスルと上がっていき見事な伸び脚で差し切っていた。
その一方、外を突いた1番人気レゴラスは届かず3着まで。
「内外の馬場状態の差はない。インコースは伸びる」
衆目の一致する答えが出た。
ユタカとノリが、これを活かさないはずがない。
ダービーでは、両者ともインコースを走り切った。
だが、ダービーを制した者は有利なそのコースを通らなくとも余りある程の力を持っていた。
<1着ディープスカイ>
距離に不安の残るレッツゴーキリシマがレースを引っ張ったことで流れは落ち着いた。
前後半のラップタイムが、73.6-73.1。
後続はこのレッツゴーキリシマからやや離れて馬群を形成していたので、当然、後方に位置した馬はもっと楽な流れ。
昨年同様に、終いの切れ味勝負となった。
これは、切れ味を武器にするディープスカイにとって絶好の展開となった。
前走同様に後方で脚を溜めるようにじっくり追走。
直線では、万全を期して外へ持ち出す余裕。
「直線は内を突きたかったが、詰まりそうだった。手応えに余裕もあったし、外に出そうと思った」と四位がレース後に語ったように、この時点で外に出すことを瞬時に決断。当然、出来ることなら四位も有利な内を突きたかったのだ。それでもパートナーの手応えの良さと前走で再認識した切れ味から不利さえ受けなければ、結果はついてくると確信したように外に持ち出した。
ゴール前では、他の上位馬が揃ってインコースに殺到していたので、四位の冷静な判断は不利を絶対に回避するという点で正しかった。
四位とディープスカイが通ったコースは、ナリタブライアン、ディープインパクトといった圧倒的な強さを誇る馬とほぼ同じだった。
直線の伸び脚は、他馬とは次元が違っていた。
今年のメンバーの中では、能力が抜けていた。
文句なしの強さだった。
見事な強さでダービー馬となり、3歳馬の頂点に立ったディープスカイ。本来なら変則三冠を目指すと声高らかに宣言したいところだろうが、今回はスタミナが要求されるようなレースでなかっただけに、陣営も秋の進路について、ディープスカイの本質的な距離適性を考慮し、名言を避けた。
慎重派の昆師が「古馬との戦い」を示唆したように、秋は菊花賞ではなく、天皇賞を目指して欲しいと思う。
ダービー馬だから有無を言わせず菊花賞を獲りにいかなければならないという時代では既になくなっている。競走馬の本質を見極め、柔軟な判断を期待したい。それがまた競馬をおもしろくする。
<四位の問題発言>
冷静な瞬時の判断で2年連続ダービージョッキーとなった四位。
オークスでの池添の余裕の無い無我夢中の若い騎乗とは、あまりに対照的だった。
まさしくダービージョッキーにふさわしい騎乗だった。
だが、完璧というのはやはり難しいものなのか、最後の最後でミスをしてしまった。
場内での勝利インタビューで「うるせっー!!」とファンを怒鳴りつけたあの失言である。
これをやじられたのだから仕方ないと簡単に片付ける訳にはいかない。
大きな注目を集める日本ダービーである。昨年は皇太子陛下も来場した日本ダービーである。日本中のホースマンが目指す日本ダービーである。
勝者は日本ダービーという重みにふさわしい振る舞いをしなければならない。
いや、四位のとった行動は日本ダービーということを抜きにしてもプロとしては実にお粗末なものだった。
そもそも、競馬場に限らず、何万という大観衆が集まる場所では、いろんなヤジが飛ぶのは仕方のないこと。(ヤジを肯定する訳でないが)
プロスポーツ選手がヤジにいちいち反応していたら、場内はとんでもないことになる。その都度ヤジを咎めたところで、それが解決策になるものでもない。
どんな卑劣なヤジがあろうと、選手は我関せずで聞き流しておけばいいだけの話。
逆に観客の方は、我関せずではいけない。
度が過ぎたヤジや行動には、周りの観客や場内関係者が注意しなければならない。
今回の一件も、状況を確認した取材によると、泥酔した一人のファンが最前列に陣取り、インタビューをさえぎるように“四位コール”を続けていため、我慢しかねた四位があのような発言をしてしまったらしい。
原因は突発的に起こったようではないので、四位に怒らせる前に、近くにいたJRA職員やマスコミ関係者、観客が止めさせるべきだった。
電車の中など公衆の場で犯罪が行われていても、周りは無視を貫くというような事件を耳にすることがあるが、今回の一件も他人に無関心な日本人の体質がよく表れている。
勝負の世界において、短気で得することは何もない、むしろそれは自分を不利な状況に追い込むだけである。
四位は、若い頃から騎乗技術には長けていたが、向こう気が強く、若手騎手への暴力事件を起こしたこともあった。
しかし、近年ではインタビューの受け答えも若い頃の生意気な口調や態度はなくなり、実に丁寧で柔らかい物腰になり、だいぶ大人になったと感じていた。
また、昨年の菊花賞後のテレビのインタビューでも好成績の要因を尋ねられた際に、「レースで馬の気持ちが分かるようになってきたことが大きい。やっと馬と会話できるようになった」と話していたのを見て、四位も本当の意味で一流騎手に近づいてきたと思っていた。四位に限らず、一流騎手が皆口にするそのことは競走馬の力を最大限発揮させることが役目である騎手の本質でもある。競走馬の力を最大限発揮させるには当然のことながら自身の技術も必要。技術の未熟な若い時代には、自分のことだけで精一杯で、レース中に馬の気持ちまで考えて乗る余裕などないのだろう。四位のその言葉は、経験を積み重ねてきたことから生まれた余裕と自身の人間的成長から生まれた余裕の表れでもあった。
そんな四位を私は高く評価していた。
それだけに、今回の発言は残念。
2年連続でダービージョッキーとなった四位には、個性的なバイプレイヤーではなく、日本を代表して、世界に挑戦する騎手になっていってもらいたい。
常に世界を見据えた広い視野があれば、あんなちっぽけなことで、大観衆の前で怒りを叩きつける行為などしないだろう。
自分の心すら上手く御すことのできない騎手は、馬の心を読み、御すことは難しいだろう。
この日の青空のような澄み切った勝利となるところを四位が最後に少し濁らせてしまった。
2着のスマイルジャックは惜しかった。
前走の皐月賞での大敗で、12番人気まで評価を落としていたが、小牧がこれ以上なく上手く乗った。
前2頭から離れた好位3番手で流れに乗り、直線も追い出しをギリギリまで我慢。
この馬の騎乗としては、完璧なものだった。
力は出し切った。
ディープスカイには完全な力負け。
仕方ない。
3着のブラックシェルは、終始インを通り、直線も良く伸びたが、1コーナーでユタカが手綱を大きく引くほどの不利が痛かった。
2番人気マイネルチャールズは、直線で馬場内目をこの馬なりに伸びてはいたが、
4着まで。このメンバーでは切れ味に見劣りする面は否めず、この馬の持ち味である類稀な勝負根性としぶとさを生かすにはもっと前で競馬をした方が良かっただろう。マイネル軍団の悲願であるダービー制覇を目標に、皐月賞では敢えてダービーを想定したレースまでしたが、結局、その辺からこの馬本来の競馬を見失ってしまったような気がする。
4番人気アドマイヤコマンドも終始インを回り、直線の200m手前までは完璧とも言えるレース運びだったが、馬が苦しくなってしまったのか、ラチ沿いまでヨレてしまい、そこから体勢を立て直すロスが痛かった。
それでも2着馬とは大差はなく、キャリアがまだ4戦ということを考えればよくやっている。ほぼ力を出し切った検討と言えよう。キャリア4戦でダービーまで駒を進めたのだから素質はある。まだこれからの馬。秋の飛躍に期待。
さて、今年のダービーで大きな話題を振りまき、3番人気に支持されたサクセスブロッケンは最下位。
初めての芝が、ダービー。
このような結果も予想できたが、短絡的にこれでまったく芝が駄目だとは決め付けられないだろう。
馬がどのレースでも全能力を出し切るという前提があるならば、この結果が全てだろうが、馬は機械ではなく、心がある。
戸惑いもあれば、恐怖心もある。
初めて経験する芝への戸惑い、ペースへの戸惑い、大観衆への恐怖心もあったかもしれない。
いくら圧倒的な強さで勝ち上がってきたとは言え、ダートの裏街道からいきなり初めての芝をダービーで走らせるというのはやはり無理があった。
ダービーまでに一度でも芝を走らせていたら、また結果は違っていたかもしれない。
陣営が戦前に自信を持って言っていたように、馬体や血統背景からは芝でも走れるものはある。
いつか、また芝に挑戦して欲しいと思う気もあるが、そもそもこの馬は脚元の不安を考慮し、ダートを使っていた馬。
最悪の事態を避けるためにも、ダートで結果が出ているのなら、ダート路線を歩んで欲しいと思う。
ダート王者が軽視される時代でもない。
堂々とダート路線を歩んで、王者を目指せばいい。
最終の目黒記念でもラチ沿いを逃げ切ったホクトスルタンをはじめ上位の馬は皆、直線でインコースを通った。
ダービーでもディープスカイを除く上位馬は、全て直線でインコースを選んだ。
この日の最後の芝4レースで外を突いて勝ったのは、ディープスカイだけだった。
そのことが、ディープスカイの抜けた強さを表していたダービーだった。
1番人気の支持を集めたのが前走のNHKマイルCを完勝したディープスカイ。
それでも、単勝3.6倍というオッズが示すとおり、絶対的な本命というわけではなかった。距離適性に対する疑問と中2週のローテーションへの不安がそれほど強く推せない要因となっていた。
2番人気には、マイネルチャールズが単勝6.1倍とやや離れて続いた。
1番人気に支持された皐月賞では、4着に敗れたが、脚を余した感があり、皐月賞組ではナンバーワンの実力という見方だった。
そして、3番人気には混戦ダービーを象徴するように芝初挑戦となるサクセスブロッケン。ダートでの圧倒的な強さと血統的に芝でも問題ないという期待だった。
4番人気も、皐月賞組ではないアドマイヤコマンド。前走で青葉賞を制した勢いと上昇度が買われた。
このレースのポイントのひとつに馬場状態があった。
前日の降雨の影響により重馬場で始まったこの日の東京開催。
幸い、この日は快晴となり、メインレースまでにどの程度馬場状態が回復するかという点も注目を集めた。
競馬の祭典ダービーは良馬場で走らせたいというファンの願いが通じたのか、馬場は予想以上に急速に回復し、ダービー前の9レースでは良馬場となった。
馬場状態を推し量る上で、ダービー前に行われた芝の2レースは参考になった。
この2レースをそれぞれ勝った馬は、ともにインコースを走り切った馬だった。
勝った馬に騎乗していたのは、それぞれユタカとノリという日本を代表する名手であり、策士だった。
特に、ダービー前の9レースでは、ユタカが巧みにインコースからスルスルと上がっていき見事な伸び脚で差し切っていた。
その一方、外を突いた1番人気レゴラスは届かず3着まで。
「内外の馬場状態の差はない。インコースは伸びる」
衆目の一致する答えが出た。
ユタカとノリが、これを活かさないはずがない。
ダービーでは、両者ともインコースを走り切った。
だが、ダービーを制した者は有利なそのコースを通らなくとも余りある程の力を持っていた。
<1着ディープスカイ>
距離に不安の残るレッツゴーキリシマがレースを引っ張ったことで流れは落ち着いた。
前後半のラップタイムが、73.6-73.1。
後続はこのレッツゴーキリシマからやや離れて馬群を形成していたので、当然、後方に位置した馬はもっと楽な流れ。
昨年同様に、終いの切れ味勝負となった。
これは、切れ味を武器にするディープスカイにとって絶好の展開となった。
前走同様に後方で脚を溜めるようにじっくり追走。
直線では、万全を期して外へ持ち出す余裕。
「直線は内を突きたかったが、詰まりそうだった。手応えに余裕もあったし、外に出そうと思った」と四位がレース後に語ったように、この時点で外に出すことを瞬時に決断。当然、出来ることなら四位も有利な内を突きたかったのだ。それでもパートナーの手応えの良さと前走で再認識した切れ味から不利さえ受けなければ、結果はついてくると確信したように外に持ち出した。
ゴール前では、他の上位馬が揃ってインコースに殺到していたので、四位の冷静な判断は不利を絶対に回避するという点で正しかった。
四位とディープスカイが通ったコースは、ナリタブライアン、ディープインパクトといった圧倒的な強さを誇る馬とほぼ同じだった。
直線の伸び脚は、他馬とは次元が違っていた。
今年のメンバーの中では、能力が抜けていた。
文句なしの強さだった。
見事な強さでダービー馬となり、3歳馬の頂点に立ったディープスカイ。本来なら変則三冠を目指すと声高らかに宣言したいところだろうが、今回はスタミナが要求されるようなレースでなかっただけに、陣営も秋の進路について、ディープスカイの本質的な距離適性を考慮し、名言を避けた。
慎重派の昆師が「古馬との戦い」を示唆したように、秋は菊花賞ではなく、天皇賞を目指して欲しいと思う。
ダービー馬だから有無を言わせず菊花賞を獲りにいかなければならないという時代では既になくなっている。競走馬の本質を見極め、柔軟な判断を期待したい。それがまた競馬をおもしろくする。
<四位の問題発言>
冷静な瞬時の判断で2年連続ダービージョッキーとなった四位。
オークスでの池添の余裕の無い無我夢中の若い騎乗とは、あまりに対照的だった。
まさしくダービージョッキーにふさわしい騎乗だった。
だが、完璧というのはやはり難しいものなのか、最後の最後でミスをしてしまった。
場内での勝利インタビューで「うるせっー!!」とファンを怒鳴りつけたあの失言である。
これをやじられたのだから仕方ないと簡単に片付ける訳にはいかない。
大きな注目を集める日本ダービーである。昨年は皇太子陛下も来場した日本ダービーである。日本中のホースマンが目指す日本ダービーである。
勝者は日本ダービーという重みにふさわしい振る舞いをしなければならない。
いや、四位のとった行動は日本ダービーということを抜きにしてもプロとしては実にお粗末なものだった。
そもそも、競馬場に限らず、何万という大観衆が集まる場所では、いろんなヤジが飛ぶのは仕方のないこと。(ヤジを肯定する訳でないが)
プロスポーツ選手がヤジにいちいち反応していたら、場内はとんでもないことになる。その都度ヤジを咎めたところで、それが解決策になるものでもない。
どんな卑劣なヤジがあろうと、選手は我関せずで聞き流しておけばいいだけの話。
逆に観客の方は、我関せずではいけない。
度が過ぎたヤジや行動には、周りの観客や場内関係者が注意しなければならない。
今回の一件も、状況を確認した取材によると、泥酔した一人のファンが最前列に陣取り、インタビューをさえぎるように“四位コール”を続けていため、我慢しかねた四位があのような発言をしてしまったらしい。
原因は突発的に起こったようではないので、四位に怒らせる前に、近くにいたJRA職員やマスコミ関係者、観客が止めさせるべきだった。
電車の中など公衆の場で犯罪が行われていても、周りは無視を貫くというような事件を耳にすることがあるが、今回の一件も他人に無関心な日本人の体質がよく表れている。
勝負の世界において、短気で得することは何もない、むしろそれは自分を不利な状況に追い込むだけである。
四位は、若い頃から騎乗技術には長けていたが、向こう気が強く、若手騎手への暴力事件を起こしたこともあった。
しかし、近年ではインタビューの受け答えも若い頃の生意気な口調や態度はなくなり、実に丁寧で柔らかい物腰になり、だいぶ大人になったと感じていた。
また、昨年の菊花賞後のテレビのインタビューでも好成績の要因を尋ねられた際に、「レースで馬の気持ちが分かるようになってきたことが大きい。やっと馬と会話できるようになった」と話していたのを見て、四位も本当の意味で一流騎手に近づいてきたと思っていた。四位に限らず、一流騎手が皆口にするそのことは競走馬の力を最大限発揮させることが役目である騎手の本質でもある。競走馬の力を最大限発揮させるには当然のことながら自身の技術も必要。技術の未熟な若い時代には、自分のことだけで精一杯で、レース中に馬の気持ちまで考えて乗る余裕などないのだろう。四位のその言葉は、経験を積み重ねてきたことから生まれた余裕と自身の人間的成長から生まれた余裕の表れでもあった。
そんな四位を私は高く評価していた。
それだけに、今回の発言は残念。
2年連続でダービージョッキーとなった四位には、個性的なバイプレイヤーではなく、日本を代表して、世界に挑戦する騎手になっていってもらいたい。
常に世界を見据えた広い視野があれば、あんなちっぽけなことで、大観衆の前で怒りを叩きつける行為などしないだろう。
自分の心すら上手く御すことのできない騎手は、馬の心を読み、御すことは難しいだろう。
この日の青空のような澄み切った勝利となるところを四位が最後に少し濁らせてしまった。
2着のスマイルジャックは惜しかった。
前走の皐月賞での大敗で、12番人気まで評価を落としていたが、小牧がこれ以上なく上手く乗った。
前2頭から離れた好位3番手で流れに乗り、直線も追い出しをギリギリまで我慢。
この馬の騎乗としては、完璧なものだった。
力は出し切った。
ディープスカイには完全な力負け。
仕方ない。
3着のブラックシェルは、終始インを通り、直線も良く伸びたが、1コーナーでユタカが手綱を大きく引くほどの不利が痛かった。
2番人気マイネルチャールズは、直線で馬場内目をこの馬なりに伸びてはいたが、
4着まで。このメンバーでは切れ味に見劣りする面は否めず、この馬の持ち味である類稀な勝負根性としぶとさを生かすにはもっと前で競馬をした方が良かっただろう。マイネル軍団の悲願であるダービー制覇を目標に、皐月賞では敢えてダービーを想定したレースまでしたが、結局、その辺からこの馬本来の競馬を見失ってしまったような気がする。
4番人気アドマイヤコマンドも終始インを回り、直線の200m手前までは完璧とも言えるレース運びだったが、馬が苦しくなってしまったのか、ラチ沿いまでヨレてしまい、そこから体勢を立て直すロスが痛かった。
それでも2着馬とは大差はなく、キャリアがまだ4戦ということを考えればよくやっている。ほぼ力を出し切った検討と言えよう。キャリア4戦でダービーまで駒を進めたのだから素質はある。まだこれからの馬。秋の飛躍に期待。
さて、今年のダービーで大きな話題を振りまき、3番人気に支持されたサクセスブロッケンは最下位。
初めての芝が、ダービー。
このような結果も予想できたが、短絡的にこれでまったく芝が駄目だとは決め付けられないだろう。
馬がどのレースでも全能力を出し切るという前提があるならば、この結果が全てだろうが、馬は機械ではなく、心がある。
戸惑いもあれば、恐怖心もある。
初めて経験する芝への戸惑い、ペースへの戸惑い、大観衆への恐怖心もあったかもしれない。
いくら圧倒的な強さで勝ち上がってきたとは言え、ダートの裏街道からいきなり初めての芝をダービーで走らせるというのはやはり無理があった。
ダービーまでに一度でも芝を走らせていたら、また結果は違っていたかもしれない。
陣営が戦前に自信を持って言っていたように、馬体や血統背景からは芝でも走れるものはある。
いつか、また芝に挑戦して欲しいと思う気もあるが、そもそもこの馬は脚元の不安を考慮し、ダートを使っていた馬。
最悪の事態を避けるためにも、ダートで結果が出ているのなら、ダート路線を歩んで欲しいと思う。
ダート王者が軽視される時代でもない。
堂々とダート路線を歩んで、王者を目指せばいい。
最終の目黒記念でもラチ沿いを逃げ切ったホクトスルタンをはじめ上位の馬は皆、直線でインコースを通った。
ダービーでもディープスカイを除く上位馬は、全て直線でインコースを選んだ。
この日の最後の芝4レースで外を突いて勝ったのは、ディープスカイだけだった。
そのことが、ディープスカイの抜けた強さを表していたダービーだった。
2008年05月30日(金) 21:15
今年のオークスは、桜花賞を制したレジネッタが5番人気に留まったということが示すとおり、絶対的本命のいない混戦模様となっていた。
そういった見方に拍車を掛けていたのが桜花賞で人気上位となったトールポピーとリトルアマポーラがそれぞれ体調不良や出遅れなどで不本意な結果になっていたことがある。
また、目標をオークス一本に絞っていたレッドアゲートがトライアルのフローラSを好内容で制し、桜花賞組に十分対抗しうる存在として一躍クローズアップされていたこともあった。
そのような状況で、戦前のポイントとして挙げられていたのが、
・桜花賞人気上位馬のトールポピーとリトルアマポーラの巻き返しはあるか
・桜花賞組とトライアル組の距離適性を含めた力関係
・前日の雨の影響によって悪化した馬場に対応できる道悪の巧拙
このような観点から1番人気に支持されたのは、桜花賞で2番人気の支持を裏切り、5着に敗れていたリトルアマポーラだった。
それでも、単勝3.9倍というオッズが示す通り絶対的な本命馬というわけではなった。
リトルアマポーラは、東京コースで行われたクイーンCで見せた息の長い末脚や器用さに欠ける脚質からもともとオークス向きという見方があった。
桜花賞では、この馬の完成度の低さという弱点が出てしまい出遅れた上に、外枠に入った不利も重なり、消化不良のレースとなっていた。
いかにコースが改修され、スタート直後の激しい位置取りが緩和されたとは言え、長いスパイラルカーブが設置されたコースでは、コースロスが大きくなる外枠は依然不利であることを表したレースだった。
幸四郎は、コースロスを承知で押し上げることはせず、後方待機のまま直線の末脚に賭けるしかなかったという内容だった。
桜花賞でメンバー中最速の末脚を繰り出したリトルアマポーラは、東京コースのオークスでこそ持ち味が生かされるという見方が多くを占めていた。
2番人気には、トライアルのフローラSを快勝したレッドアゲートが5.3倍で続いた。前走の内容とオークス一本に目標を絞った臨戦過程から距離適性を買われての評価だった。
3番人気にも、距離適性を買われたソーマジック。
桜花賞では3着に敗れていたが、血統背景からは距離延長がプラスになるという見方だった。
4番人気は、桜花賞で1番人気に推されたトールポピー。
2歳女王という実力に加え、距離適性やコース適性では最も適していると思われるこの馬にとって、この人気は過小評価と言えるものだった。
そうなった要因に、この馬の体調面に対する不安があった。
桜花賞では、馬体重が一気に10キロ減ったことが響き、不甲斐ない敗戦を喫していたトールポピー陣営にとって、この中間は馬体の回復に主眼を置いた軽めの馬なり中心の調整だった。
このような臨戦過程のトールポピーに対し、半信半疑という評価が大半を占めていた。
それでも、1週前追い切りでは強めに追って反応の良さが見え、仕上げで流すように馬なりに抑えた最終追い切りでも、気合の良さから口を割って行きたがる素振りを見せ、この馬本来の状態に戻っていた。
体調が良くないという先入観で見てしまうのか、中にはこの馬なりの最終追い切りの評価として、口を割って苦しがっているというとんでもなく誤った見方さえあった。
無論、GIレースを獲りに行くのに、馬なりで苦しがってしまうような仕上げであるはずもなかった・・。
レースは、エアパスカルが逃げてペースを作った。
距離に不安の残るエアパスカルだけにハイペースで飛ばす訳もなく、近年のオークス同様に、淡々と落ち着いた流れになった。(ヤマニンファビュルが大逃げを打った06年のみ例外)その結果、前後半のタイムはほぼ同じという流れとなり、全馬とも位置取りに関係なく力を発揮しやすい紛れの少ない展開となった。
トールポピーの池添は、この展開を見越してか、中団よりやや前に位置した。
そして、4コーナーの出口で外に持ち出し、戦闘体勢へと入った。
ここまでは完璧なレース運びだった。
だが、この後がまずかった。酷かった。
外に出そうとしたが、外にムードインディゴがいたため出せず、すぐさま内へ進路をとると、前に進路があるにも関わらず内へ内へとささってしまう。
最後はラチ沿いまで辿り着くというまさに縦横無尽という走りで着差以上の完勝。
だが、その結果、複数の馬が進路を妨害されてしまった。
この池添の騎乗はあまりに酷かった。
内へささる馬をさらに右ムチを使って内に誘導してしまうというプロの騎手としてはかなり低レベルなもので、多くの疑問や不満の声が挙がったように、本来なら降着処分となっても不思議ではないものだった。
実際、池添には開催2日間の騎乗停止処分が下った。
ところが、馬の方は降着処分にはならず。
この何とも後味の悪い、不可解な処分を下したJRAの説明によれば、池添騎手の騎乗は明らかな走行妨害があり、その斜行を修正しようとしなかった悪質なものと判断し処分の対象、しかしながらその斜行によって被害を受けた馬の被害の度合いは少ないので降着にはならないとのこと。
つまり、騎手の騎乗は許さず、その騎手が騎乗した馬は許すというもの。
このJRAの下した処分に対し、一部では、勝った馬が日本競馬を牛耳っている有力グループの生産馬であったため主催者であるJRAの配慮があった、また被害を受けた馬もトールポピーと同一グループの馬だったので敢えて抗議をしなかったという意見も出たが、ここでは憶測でそういったことまで踏み込んで言及するのは賢明でないので避けておく。
だが、紛れもない事実として残っている池添の騎乗については、さらに詳しく。
直線に入って、外に持ち出そうとしたが、外のムードインディゴにブロックされ(ただし、ここでムードインディゴに馬体をぶつけている)、内へと進路を変更。ここで、トールポピーは父譲りの気性からか急激に内へとササってしまう。それでもここでは運良く他馬に被害を与えることはなかった。インコースを走っていたレジネッタの外側まで来ると、斜行は収まる。このとき前方はポッカリと開いていた。ここから審議の対象となった事象が起こる。あろうことか、ここで池添は右ムチを使い始めてしまう。これに応じたトールポピーは、さらに内へとササり、幅寄せをするような形で、レジネッタとオディール、ソーマジックの3頭の走行を妨害した。内へササっている馬に対し、その動きをさらに加速させるように右ムチを使うのはかなり悪質。これが処分の対象となった。ムチを使うのであれば、斜行を修正するように左からでなければならなかった。少しでも斜行を修正するような動作があれば、結果も処分もまた違っていただろう。
これは完全な憶測になるが、池添はおそらく「無我夢中」だったのだろう。
逆に、あれがもし意図的だったとしたら、完全な「馬鹿」だ。
「他馬の走行を妨害してはならない」という競馬の基本的なルールがあるにも関わらず、あの場面(前方は完全に開いていた)で、それを敢えて犯すような賭けには出るはずもない。そんな必要も全くない状況だった。
池添のレース後の勝者とは思えぬ落胆の表情を見れば、あれが意図的ではなかったことは明白だ。レース後のガッツポーズも他馬に迷惑をかけたことすら認識してないからこそ出たものだろう。
池添の騎乗スタイルと良さは、思い切りの良い大胆さであるが、それが軽率であってはならない。「大胆」と「軽率」はまったく違う。大胆な騎乗とは、その元になる予測から導き出されたものでなくてはならない。
今回の池添の騎乗は、予測を怠った実に軽率なものだった。
池添もこれまでそれなり実績を残してきたとは言え、まだ若い。
GIレースで、「無我夢中」になってしまうのも分からないでもない。
だが、これから池添がもうワンランク上の騎手になるためには、「冷静な予測と判断に基づく大胆な騎乗」が必要になるはずだ。
多くのファンが注目し、多額の金額が動くGIレースでは特に今回のような低レベルなラフプレーはあってはならない。
それしても、池添という男はつくづく運の良い男だと思った…。
池添のラフプレーによって、後味が悪くなり、すっかり影が薄くなってしまったが、短期間でトールポピーを立て直した角居師の手腕はさすがだ。
「馬体の迫力は桜花賞とは違った」と師が自ら語ったように、馬体重こそ2キロ増に留まったが、本来の状態に戻り、完全に仕上がっていた。
いろんな意味で荒れたレースで2着に入ったのが、13番人気のエフティマイア。
桜花賞2着馬ながら13番人気という低評価となった理由に距離適性があった。
ニホンピロウイナー×フジキセキという配合は、マイラー色が強いからだ。
実際、この馬は本質的にはマイラーなのだろう。管理する鹿戸師も距離には不安があったという。
だが、オークスでは、桜花賞から距離が一気に800m延びることもあり、ペースが速くなるということはほとんどありえず、昨年のローブデコルテや4年前のダイワエルシエーロのように本質的にマイラーであっても能力の高さで距離適性を補うケースが通例となっている。
今回も淡々とした流れになったことがこの馬にとっては良かったのだろう。
また、前走から馬体が12キロ増えて、さらにパワーアップして地力が強化されたことも大きかった。
この馬を育て上げた矢野進元調教師の定年に伴い、3月から鹿戸厩舎に移っているが、厩舎に来た時に疲れが残っていたという馬を鹿戸師が見事に立ち直らせた。
鹿戸師の手腕にも賛辞を送りたい。
桜花賞馬レジネッタは、5番人気に留まったが、地力を証明した。
トールポピーの斜行による不利を受けたが、それほど酷いものではなく、力はほぼ出し切ったと言える。
4着ブラックエンブレムはマイナス16キロと、桜花賞とは一転攻めの調整で絶好の状態に仕上がっていたことで、能力を十分に発揮できた。
松岡も上手く乗っていた。GIではもうワンパンチ足りないのと、本質的に距離も長かったか。
5着オディールもトールポピーの斜行による不利を受けたが、それほど酷いものではなく、力はほぼ出し切った。
距離適性から11番人気に評価を落としていたが、「もっと早く仕掛けてもよかったかも」とアンカツが語ったように、スタミナの問われない流れが好結果に繋がった。
2番人気レッドアゲートは、前走のような伸び脚が見れず、6着まで。
鞍上の内田博も「思ったより弾けてくれなかった」と首を捻る凡走。
状態が下降線だったか。あるいは馬場を気にしたか。
秋の巻き返しに期待。
1番人気リトルアマポーラも直線でいつも伸び脚が見られず、7着
馬場の影響か。
そういった見方に拍車を掛けていたのが桜花賞で人気上位となったトールポピーとリトルアマポーラがそれぞれ体調不良や出遅れなどで不本意な結果になっていたことがある。
また、目標をオークス一本に絞っていたレッドアゲートがトライアルのフローラSを好内容で制し、桜花賞組に十分対抗しうる存在として一躍クローズアップされていたこともあった。
そのような状況で、戦前のポイントとして挙げられていたのが、
・桜花賞人気上位馬のトールポピーとリトルアマポーラの巻き返しはあるか
・桜花賞組とトライアル組の距離適性を含めた力関係
・前日の雨の影響によって悪化した馬場に対応できる道悪の巧拙
このような観点から1番人気に支持されたのは、桜花賞で2番人気の支持を裏切り、5着に敗れていたリトルアマポーラだった。
それでも、単勝3.9倍というオッズが示す通り絶対的な本命馬というわけではなった。
リトルアマポーラは、東京コースで行われたクイーンCで見せた息の長い末脚や器用さに欠ける脚質からもともとオークス向きという見方があった。
桜花賞では、この馬の完成度の低さという弱点が出てしまい出遅れた上に、外枠に入った不利も重なり、消化不良のレースとなっていた。
いかにコースが改修され、スタート直後の激しい位置取りが緩和されたとは言え、長いスパイラルカーブが設置されたコースでは、コースロスが大きくなる外枠は依然不利であることを表したレースだった。
幸四郎は、コースロスを承知で押し上げることはせず、後方待機のまま直線の末脚に賭けるしかなかったという内容だった。
桜花賞でメンバー中最速の末脚を繰り出したリトルアマポーラは、東京コースのオークスでこそ持ち味が生かされるという見方が多くを占めていた。
2番人気には、トライアルのフローラSを快勝したレッドアゲートが5.3倍で続いた。前走の内容とオークス一本に目標を絞った臨戦過程から距離適性を買われての評価だった。
3番人気にも、距離適性を買われたソーマジック。
桜花賞では3着に敗れていたが、血統背景からは距離延長がプラスになるという見方だった。
4番人気は、桜花賞で1番人気に推されたトールポピー。
2歳女王という実力に加え、距離適性やコース適性では最も適していると思われるこの馬にとって、この人気は過小評価と言えるものだった。
そうなった要因に、この馬の体調面に対する不安があった。
桜花賞では、馬体重が一気に10キロ減ったことが響き、不甲斐ない敗戦を喫していたトールポピー陣営にとって、この中間は馬体の回復に主眼を置いた軽めの馬なり中心の調整だった。
このような臨戦過程のトールポピーに対し、半信半疑という評価が大半を占めていた。
それでも、1週前追い切りでは強めに追って反応の良さが見え、仕上げで流すように馬なりに抑えた最終追い切りでも、気合の良さから口を割って行きたがる素振りを見せ、この馬本来の状態に戻っていた。
体調が良くないという先入観で見てしまうのか、中にはこの馬なりの最終追い切りの評価として、口を割って苦しがっているというとんでもなく誤った見方さえあった。
無論、GIレースを獲りに行くのに、馬なりで苦しがってしまうような仕上げであるはずもなかった・・。
レースは、エアパスカルが逃げてペースを作った。
距離に不安の残るエアパスカルだけにハイペースで飛ばす訳もなく、近年のオークス同様に、淡々と落ち着いた流れになった。(ヤマニンファビュルが大逃げを打った06年のみ例外)その結果、前後半のタイムはほぼ同じという流れとなり、全馬とも位置取りに関係なく力を発揮しやすい紛れの少ない展開となった。
トールポピーの池添は、この展開を見越してか、中団よりやや前に位置した。
そして、4コーナーの出口で外に持ち出し、戦闘体勢へと入った。
ここまでは完璧なレース運びだった。
だが、この後がまずかった。酷かった。
外に出そうとしたが、外にムードインディゴがいたため出せず、すぐさま内へ進路をとると、前に進路があるにも関わらず内へ内へとささってしまう。
最後はラチ沿いまで辿り着くというまさに縦横無尽という走りで着差以上の完勝。
だが、その結果、複数の馬が進路を妨害されてしまった。
この池添の騎乗はあまりに酷かった。
内へささる馬をさらに右ムチを使って内に誘導してしまうというプロの騎手としてはかなり低レベルなもので、多くの疑問や不満の声が挙がったように、本来なら降着処分となっても不思議ではないものだった。
実際、池添には開催2日間の騎乗停止処分が下った。
ところが、馬の方は降着処分にはならず。
この何とも後味の悪い、不可解な処分を下したJRAの説明によれば、池添騎手の騎乗は明らかな走行妨害があり、その斜行を修正しようとしなかった悪質なものと判断し処分の対象、しかしながらその斜行によって被害を受けた馬の被害の度合いは少ないので降着にはならないとのこと。
つまり、騎手の騎乗は許さず、その騎手が騎乗した馬は許すというもの。
このJRAの下した処分に対し、一部では、勝った馬が日本競馬を牛耳っている有力グループの生産馬であったため主催者であるJRAの配慮があった、また被害を受けた馬もトールポピーと同一グループの馬だったので敢えて抗議をしなかったという意見も出たが、ここでは憶測でそういったことまで踏み込んで言及するのは賢明でないので避けておく。
だが、紛れもない事実として残っている池添の騎乗については、さらに詳しく。
直線に入って、外に持ち出そうとしたが、外のムードインディゴにブロックされ(ただし、ここでムードインディゴに馬体をぶつけている)、内へと進路を変更。ここで、トールポピーは父譲りの気性からか急激に内へとササってしまう。それでもここでは運良く他馬に被害を与えることはなかった。インコースを走っていたレジネッタの外側まで来ると、斜行は収まる。このとき前方はポッカリと開いていた。ここから審議の対象となった事象が起こる。あろうことか、ここで池添は右ムチを使い始めてしまう。これに応じたトールポピーは、さらに内へとササり、幅寄せをするような形で、レジネッタとオディール、ソーマジックの3頭の走行を妨害した。内へササっている馬に対し、その動きをさらに加速させるように右ムチを使うのはかなり悪質。これが処分の対象となった。ムチを使うのであれば、斜行を修正するように左からでなければならなかった。少しでも斜行を修正するような動作があれば、結果も処分もまた違っていただろう。
これは完全な憶測になるが、池添はおそらく「無我夢中」だったのだろう。
逆に、あれがもし意図的だったとしたら、完全な「馬鹿」だ。
「他馬の走行を妨害してはならない」という競馬の基本的なルールがあるにも関わらず、あの場面(前方は完全に開いていた)で、それを敢えて犯すような賭けには出るはずもない。そんな必要も全くない状況だった。
池添のレース後の勝者とは思えぬ落胆の表情を見れば、あれが意図的ではなかったことは明白だ。レース後のガッツポーズも他馬に迷惑をかけたことすら認識してないからこそ出たものだろう。
池添の騎乗スタイルと良さは、思い切りの良い大胆さであるが、それが軽率であってはならない。「大胆」と「軽率」はまったく違う。大胆な騎乗とは、その元になる予測から導き出されたものでなくてはならない。
今回の池添の騎乗は、予測を怠った実に軽率なものだった。
池添もこれまでそれなり実績を残してきたとは言え、まだ若い。
GIレースで、「無我夢中」になってしまうのも分からないでもない。
だが、これから池添がもうワンランク上の騎手になるためには、「冷静な予測と判断に基づく大胆な騎乗」が必要になるはずだ。
多くのファンが注目し、多額の金額が動くGIレースでは特に今回のような低レベルなラフプレーはあってはならない。
それしても、池添という男はつくづく運の良い男だと思った…。
池添のラフプレーによって、後味が悪くなり、すっかり影が薄くなってしまったが、短期間でトールポピーを立て直した角居師の手腕はさすがだ。
「馬体の迫力は桜花賞とは違った」と師が自ら語ったように、馬体重こそ2キロ増に留まったが、本来の状態に戻り、完全に仕上がっていた。
いろんな意味で荒れたレースで2着に入ったのが、13番人気のエフティマイア。
桜花賞2着馬ながら13番人気という低評価となった理由に距離適性があった。
ニホンピロウイナー×フジキセキという配合は、マイラー色が強いからだ。
実際、この馬は本質的にはマイラーなのだろう。管理する鹿戸師も距離には不安があったという。
だが、オークスでは、桜花賞から距離が一気に800m延びることもあり、ペースが速くなるということはほとんどありえず、昨年のローブデコルテや4年前のダイワエルシエーロのように本質的にマイラーであっても能力の高さで距離適性を補うケースが通例となっている。
今回も淡々とした流れになったことがこの馬にとっては良かったのだろう。
また、前走から馬体が12キロ増えて、さらにパワーアップして地力が強化されたことも大きかった。
この馬を育て上げた矢野進元調教師の定年に伴い、3月から鹿戸厩舎に移っているが、厩舎に来た時に疲れが残っていたという馬を鹿戸師が見事に立ち直らせた。
鹿戸師の手腕にも賛辞を送りたい。
桜花賞馬レジネッタは、5番人気に留まったが、地力を証明した。
トールポピーの斜行による不利を受けたが、それほど酷いものではなく、力はほぼ出し切ったと言える。
4着ブラックエンブレムはマイナス16キロと、桜花賞とは一転攻めの調整で絶好の状態に仕上がっていたことで、能力を十分に発揮できた。
松岡も上手く乗っていた。GIではもうワンパンチ足りないのと、本質的に距離も長かったか。
5着オディールもトールポピーの斜行による不利を受けたが、それほど酷いものではなく、力はほぼ出し切った。
距離適性から11番人気に評価を落としていたが、「もっと早く仕掛けてもよかったかも」とアンカツが語ったように、スタミナの問われない流れが好結果に繋がった。
2番人気レッドアゲートは、前走のような伸び脚が見れず、6着まで。
鞍上の内田博も「思ったより弾けてくれなかった」と首を捻る凡走。
状態が下降線だったか。あるいは馬場を気にしたか。
秋の巻き返しに期待。
1番人気リトルアマポーラも直線でいつも伸び脚が見られず、7着
馬場の影響か。
2008年05月23日(金) 21:20
ウオッカという超一流馬が参戦した今年のヴィクトリアマイル。
このレースを展望する上で、このウオッカに大きな関心が集まった。
さらに、ウオッカのここまでの臨戦過程からくる「体調不安説」がそれに拍車をかけた。
激闘となったドバイ遠征から帰国後、調整期間は約1ヶ月。
馬体の細化が見受けられ、必ずしも万全と言える状態は望めそうもなく、戦前の陣営のコメントも「走れる体にはなっている」と歯切れの悪いものになっていた。
とは言いながらも、このメンバーの中では実績で二枚も三枚も上回り、大目標はこの先にあるウオッカにとって、「勝たなくてはいけないレース」だった。
ウオッカに死角はあるのか。
ウオッカの状態は大丈夫か。馬体重はどうか。
ウオッカを負かせる馬はいるのか。
これがこのレースの大きな注目点となっていた。
そして、もうひとつがレース展開。
このレースは今年で3回目となるが、過去2年ともスローペースで上がり勝負のレース
となっていた。
そして、今年の場合も戦前からスローペース必至と見られていた中で、各馬の位置取り、上がり勝負に強いのはどの馬かといったことがポイントとなっていた。
そして、その条件、すなわち「好位からの競馬」、「他馬を凌ぐ瞬発力」に最もよく当て嵌まったのが、勝ったエイジアンウインズ。
前後半のタイムが47.9-45.8という超スローペースの中、好位から追走。
最後もメンバー2番目の上がり33.4秒でまとめ、最速の上がりで迫るウオッカを振り切った。
藤田騎手も勝利インタビューで陣営の力を賞賛したように、この馬の能力もさることながら、陣営の力もこの勝利の大きな要因となった。
最終追い切りでは、一杯に追い、この大一番に向け、過去最高の状態を作りあげてきた。
昨年の段階からこのヴィクトリアMを見据えていたというからさらに凄い。
「桜花賞を目指せる馬だったが東京1600メートルのヴィクトリアマイルが合うと思って休ませた。オーナーの理解がありがたかった」との藤原師の言葉に感服した。
1年以上も前から目標に置き、過去最高の状態で挑んだこのレース。
この馬にとって初めてのマイル戦だったが、鞍上を含めた陣営に不安や迷いはまったくなかっただろう。
また、藤原師のクラシックさえも見向きしない先を見据えた育成方針を理解したオーナーの太田美實氏の理解力と寛大さも賞賛に値する。
クラシックには無理をしてでもとにかく出走させたいと考えるホースマンがいまだ多数いる中で、藤原師と太田氏の英断と結果は賞賛だけでなく、日本の競馬関係者の価値観にも今後大きな影響を与えるだろう。
この勝利は、藤原師にとっては初のGI制覇、太田氏にとっては、あのウイニングチケット以来の2度目のGI制覇となったが、まさに、この両者の信頼関係によって成し遂げた勝利といえよう。
フォーティナイナー、デインヒル、フジキセキと配されたきた血統的には、距離が延びて良いというタイプではないだけに、当然ながら今後もマイル路線を進んでいくのだろう。ここまでまったく底を見せていない馬。今後どこまで成長するのか楽しみ。
3着ブルーメンブラットは、先行策から3番目の上がりを繰り出し、力を出し切った。
上位2頭には完全な力負け。
千六より千四がいいのは明白なタイプの馬だが、極端に遅いペースとなった今回は千六を乗り切るスタミナを要求されず、自身の能力は出し切れた。「きょうは上位に来た馬の強さを認めるべき」という後藤のコメントもそれを物語っている。
敗因を距離に求めるのはナンセンスで、むしろ勝ち馬から0.1秒の3着という結果は、好走したと賞賛すべきものだろう。
無論、距離に敗因を求めるなどという愚かな意見などほとんどないようだが。
4着ヤマニンメルベイユは、先行策がこの好結果を生んだ。
上位3頭には、差をつけられたが、よく走っている。
成長力に富むメジロマックイーンの産駒。既に6歳ながらここにきて力をつけている。
2番人気ニシノマナムスメは、思い通りの競馬は出来たが、5着。
スローペースを見越し積極策。予想以上のスローペースの中、絶好位からレースをしたが、直線で伸びを欠いた。
スローペースだっただけに、位置取りがその原因にはならない。
前走から10キロ増えた馬体がこたえたか。
馬なりにした軽めの最終追い切りが裏目に出たようだ。
牡馬相手に僅差の2着に入った馬。もう少しやれてもいいはず。
6着のピンクカメオは、逃げるという積極策が功を奏した。
スタートはそれほど良いという訳ではなかったが、逃げ先行タイプのヤマニンメルベイユを交わし、ハナに立った。スローペースになる、そしてヤマニンメルベイユはハナにこだわっていないという判断が内田博幸騎手にはあったのだろう。好騎乗だった。
デビュー以来、初めて逃げたこの馬だったが、この馬が逃げなくても同じようなペースのレースになっただろうから、もしいつもような位置取りだったら、この6着という好結果はなかっただろう。力は出し切った。瞬発力のあるタイプではないだけに、後ろからいってもあれ以上に速い上がりを出すのは厳しかったはずだ。
それを如実に物語っているのが、力を出し切れず7着に敗れたジョリーダンスのアンカツの言葉。「ピュッという脚がない分、勝負どころで他の馬に前に入られて…。ペースが遅かったので行っちゃえば良かった」。
この馬もピンクカメオの直後の4番手につけていたが、今回のような極端なスローペースでは、なるべく前に位置した馬、そして瞬発力のある馬がいかに有利だということが分かる。
休み明けながら3番人気に支持されたベッラレイアは、直線で伸びを欠き、8着。
秋山が認めているように、やはり、休み明けの影響で、万全の体調ではなかったようだ。
それと、2着に入ったオークスのように長くいい脚が使えるこの馬にとって、スローペースのよーいドンという競馬はそもそも向かない。もっと速い流れだったら少しは結果も違っていただろう。
よくレースは生き物というように、当然のことながら、競馬はそのレースによってペースも異なる。そのときのペースによっても向き不向きの脚質があるように、一概に東京コースだからこういう脚質が有利という単純な発想は通用しない。
同じコース、同じ距離のレースでも、息の長い末脚が活きる場合もあれば、今回のように瞬発力と先行力が活きる場合もある。
何でもかんでも傾向という枠組に一様にはめ込み、単純化してしまおうとする奴ほど、可哀想なことだがやっぱり馬券はほとんど当たらない。競馬はそんなに単純ではない。
中団より前に位置した馬が8位までを占めたレースで、唯一の例外が2着のウオッカ。
スタート後は先団につけていたが、スローペースを見越し各馬が上がっていく中、徐々に位置取りを下げていった。誰もが完全にスローと分かるペースの中、3コーナーから4コーナーでも仕掛けずに、さらに直線でも残り400mを過ぎてもユタカは手綱を持ったまま。
追い出してからは、メンバー中最速の33.2秒という上がりで猛追したが、3/4馬身届かなかった。
ユタカ本人がレース前に言っていたように、格下相手のこのレースはいかに万全の状態でなかろうとも「負けてはいけないレース」だった。
はたして、そのような騎乗をしただろうか。
ユタカは、「あの位置からでも交わせると思った」と言うが、万全とは程遠い状態のウオッカにあれ以上の脚を望むのは酷。
いかにスローペースと言えども、その馬の持っている極限の瞬発力以上の速い脚は使えない。だから、スローペースの場合、前にいる馬も余力がある分、上がりも速くなるので、後ろからそれ以上の上がりで差し切るのは、位置取りが後ろになる程、困難になる。
後ろにいればいるほど、速い上がりで追い込めると、単純にはいかないのだ。
今回のような極端なスローペースの場合、位置取りに関係なくどの馬も余力は十分残っているので、それぞれの持っている極限の瞬発力比べとなる。
だから、当然前に位置している馬の方が有利になる。
人気薄の逃げ馬が、スローペースを利して穴を開けるというのは、この最たる例。
つまり、ペースが遅くなるほど、レースタイムが遅くなるので、レースレベルが落ちて、展開による紛れが生じてしまう。
今回のウオッカのレースは、力の劣る相手の作った低レベルなレースに合わせて、さらに位置取りを下げ、仕掛けを遅らせることによって、次々と自らにハンデを課していったようなもの。
多くのファンから批判を浴びたこの騎乗のユタカの意図は、「伸びかけて止まる競馬が続いていたので、ギリギリまで追い出しを我慢した」という。
確かに前走のドバイデューティーFでは、最後に脚が止まってしまっていた。
だが、そのレースと今回では相手の力があまりに違う。
今回は、小細工などをするレースではなかったと思う。
パドックでは明らかに細く、状態が万全でなかったのは百も承知だが、堂々と力で捻じ伏せて欲しかった。
約一年勝ち星から遠ざかっているウオッカに対し、一部ではウオッカ早熟説も上がっているようだが、ダービー以降の敗戦にはそれぞれ明確な敗因があり、力負けしたのは前走のドバイFのみ。初めて海外に遠征し、世界最高レベルのレースで4着に入っていながら能力の限界が囁かれるのだから、ウオッカも大した馬だ。
確かに、ダービーの勝ち方はあまりに衝撃的で、それ以降はそれ以上のパフォーマンスを見せていない。
だが、そんなウオッカと言えどもサイボーグでなく、動物だ。生きているし、心もある。
いつも全能力を出し切れる訳でない。
体調が良くないときもあれば、走りたくないときだってあるだろう。
それは人間だって同じ。
どんな優れたスポーツマンでもスランプなんてないという者はいない。
まして、馬が相手なら、全戦で全能力を出せという方がそもそも難しい話。
ウオッカの場合、不運などが重なり、順調さを欠いたことで、能力を出し切れず思うような結果が残せなかっただけ。
ウオッカは早熟だった説く者は、馬を機械のように見てしまうから、単純にその結果だけしか見ることができないだろう。
ウオッカの巻き返しはきっとあるはずだ。
このレースを展望する上で、このウオッカに大きな関心が集まった。
さらに、ウオッカのここまでの臨戦過程からくる「体調不安説」がそれに拍車をかけた。
激闘となったドバイ遠征から帰国後、調整期間は約1ヶ月。
馬体の細化が見受けられ、必ずしも万全と言える状態は望めそうもなく、戦前の陣営のコメントも「走れる体にはなっている」と歯切れの悪いものになっていた。
とは言いながらも、このメンバーの中では実績で二枚も三枚も上回り、大目標はこの先にあるウオッカにとって、「勝たなくてはいけないレース」だった。
ウオッカに死角はあるのか。
ウオッカの状態は大丈夫か。馬体重はどうか。
ウオッカを負かせる馬はいるのか。
これがこのレースの大きな注目点となっていた。
そして、もうひとつがレース展開。
このレースは今年で3回目となるが、過去2年ともスローペースで上がり勝負のレース
となっていた。
そして、今年の場合も戦前からスローペース必至と見られていた中で、各馬の位置取り、上がり勝負に強いのはどの馬かといったことがポイントとなっていた。
そして、その条件、すなわち「好位からの競馬」、「他馬を凌ぐ瞬発力」に最もよく当て嵌まったのが、勝ったエイジアンウインズ。
前後半のタイムが47.9-45.8という超スローペースの中、好位から追走。
最後もメンバー2番目の上がり33.4秒でまとめ、最速の上がりで迫るウオッカを振り切った。
藤田騎手も勝利インタビューで陣営の力を賞賛したように、この馬の能力もさることながら、陣営の力もこの勝利の大きな要因となった。
最終追い切りでは、一杯に追い、この大一番に向け、過去最高の状態を作りあげてきた。
昨年の段階からこのヴィクトリアMを見据えていたというからさらに凄い。
「桜花賞を目指せる馬だったが東京1600メートルのヴィクトリアマイルが合うと思って休ませた。オーナーの理解がありがたかった」との藤原師の言葉に感服した。
1年以上も前から目標に置き、過去最高の状態で挑んだこのレース。
この馬にとって初めてのマイル戦だったが、鞍上を含めた陣営に不安や迷いはまったくなかっただろう。
また、藤原師のクラシックさえも見向きしない先を見据えた育成方針を理解したオーナーの太田美實氏の理解力と寛大さも賞賛に値する。
クラシックには無理をしてでもとにかく出走させたいと考えるホースマンがいまだ多数いる中で、藤原師と太田氏の英断と結果は賞賛だけでなく、日本の競馬関係者の価値観にも今後大きな影響を与えるだろう。
この勝利は、藤原師にとっては初のGI制覇、太田氏にとっては、あのウイニングチケット以来の2度目のGI制覇となったが、まさに、この両者の信頼関係によって成し遂げた勝利といえよう。
フォーティナイナー、デインヒル、フジキセキと配されたきた血統的には、距離が延びて良いというタイプではないだけに、当然ながら今後もマイル路線を進んでいくのだろう。ここまでまったく底を見せていない馬。今後どこまで成長するのか楽しみ。
3着ブルーメンブラットは、先行策から3番目の上がりを繰り出し、力を出し切った。
上位2頭には完全な力負け。
千六より千四がいいのは明白なタイプの馬だが、極端に遅いペースとなった今回は千六を乗り切るスタミナを要求されず、自身の能力は出し切れた。「きょうは上位に来た馬の強さを認めるべき」という後藤のコメントもそれを物語っている。
敗因を距離に求めるのはナンセンスで、むしろ勝ち馬から0.1秒の3着という結果は、好走したと賞賛すべきものだろう。
無論、距離に敗因を求めるなどという愚かな意見などほとんどないようだが。
4着ヤマニンメルベイユは、先行策がこの好結果を生んだ。
上位3頭には、差をつけられたが、よく走っている。
成長力に富むメジロマックイーンの産駒。既に6歳ながらここにきて力をつけている。
2番人気ニシノマナムスメは、思い通りの競馬は出来たが、5着。
スローペースを見越し積極策。予想以上のスローペースの中、絶好位からレースをしたが、直線で伸びを欠いた。
スローペースだっただけに、位置取りがその原因にはならない。
前走から10キロ増えた馬体がこたえたか。
馬なりにした軽めの最終追い切りが裏目に出たようだ。
牡馬相手に僅差の2着に入った馬。もう少しやれてもいいはず。
6着のピンクカメオは、逃げるという積極策が功を奏した。
スタートはそれほど良いという訳ではなかったが、逃げ先行タイプのヤマニンメルベイユを交わし、ハナに立った。スローペースになる、そしてヤマニンメルベイユはハナにこだわっていないという判断が内田博幸騎手にはあったのだろう。好騎乗だった。
デビュー以来、初めて逃げたこの馬だったが、この馬が逃げなくても同じようなペースのレースになっただろうから、もしいつもような位置取りだったら、この6着という好結果はなかっただろう。力は出し切った。瞬発力のあるタイプではないだけに、後ろからいってもあれ以上に速い上がりを出すのは厳しかったはずだ。
それを如実に物語っているのが、力を出し切れず7着に敗れたジョリーダンスのアンカツの言葉。「ピュッという脚がない分、勝負どころで他の馬に前に入られて…。ペースが遅かったので行っちゃえば良かった」。
この馬もピンクカメオの直後の4番手につけていたが、今回のような極端なスローペースでは、なるべく前に位置した馬、そして瞬発力のある馬がいかに有利だということが分かる。
休み明けながら3番人気に支持されたベッラレイアは、直線で伸びを欠き、8着。
秋山が認めているように、やはり、休み明けの影響で、万全の体調ではなかったようだ。
それと、2着に入ったオークスのように長くいい脚が使えるこの馬にとって、スローペースのよーいドンという競馬はそもそも向かない。もっと速い流れだったら少しは結果も違っていただろう。
よくレースは生き物というように、当然のことながら、競馬はそのレースによってペースも異なる。そのときのペースによっても向き不向きの脚質があるように、一概に東京コースだからこういう脚質が有利という単純な発想は通用しない。
同じコース、同じ距離のレースでも、息の長い末脚が活きる場合もあれば、今回のように瞬発力と先行力が活きる場合もある。
何でもかんでも傾向という枠組に一様にはめ込み、単純化してしまおうとする奴ほど、可哀想なことだがやっぱり馬券はほとんど当たらない。競馬はそんなに単純ではない。
中団より前に位置した馬が8位までを占めたレースで、唯一の例外が2着のウオッカ。
スタート後は先団につけていたが、スローペースを見越し各馬が上がっていく中、徐々に位置取りを下げていった。誰もが完全にスローと分かるペースの中、3コーナーから4コーナーでも仕掛けずに、さらに直線でも残り400mを過ぎてもユタカは手綱を持ったまま。
追い出してからは、メンバー中最速の33.2秒という上がりで猛追したが、3/4馬身届かなかった。
ユタカ本人がレース前に言っていたように、格下相手のこのレースはいかに万全の状態でなかろうとも「負けてはいけないレース」だった。
はたして、そのような騎乗をしただろうか。
ユタカは、「あの位置からでも交わせると思った」と言うが、万全とは程遠い状態のウオッカにあれ以上の脚を望むのは酷。
いかにスローペースと言えども、その馬の持っている極限の瞬発力以上の速い脚は使えない。だから、スローペースの場合、前にいる馬も余力がある分、上がりも速くなるので、後ろからそれ以上の上がりで差し切るのは、位置取りが後ろになる程、困難になる。
後ろにいればいるほど、速い上がりで追い込めると、単純にはいかないのだ。
今回のような極端なスローペースの場合、位置取りに関係なくどの馬も余力は十分残っているので、それぞれの持っている極限の瞬発力比べとなる。
だから、当然前に位置している馬の方が有利になる。
人気薄の逃げ馬が、スローペースを利して穴を開けるというのは、この最たる例。
つまり、ペースが遅くなるほど、レースタイムが遅くなるので、レースレベルが落ちて、展開による紛れが生じてしまう。
今回のウオッカのレースは、力の劣る相手の作った低レベルなレースに合わせて、さらに位置取りを下げ、仕掛けを遅らせることによって、次々と自らにハンデを課していったようなもの。
多くのファンから批判を浴びたこの騎乗のユタカの意図は、「伸びかけて止まる競馬が続いていたので、ギリギリまで追い出しを我慢した」という。
確かに前走のドバイデューティーFでは、最後に脚が止まってしまっていた。
だが、そのレースと今回では相手の力があまりに違う。
今回は、小細工などをするレースではなかったと思う。
パドックでは明らかに細く、状態が万全でなかったのは百も承知だが、堂々と力で捻じ伏せて欲しかった。
約一年勝ち星から遠ざかっているウオッカに対し、一部ではウオッカ早熟説も上がっているようだが、ダービー以降の敗戦にはそれぞれ明確な敗因があり、力負けしたのは前走のドバイFのみ。初めて海外に遠征し、世界最高レベルのレースで4着に入っていながら能力の限界が囁かれるのだから、ウオッカも大した馬だ。
確かに、ダービーの勝ち方はあまりに衝撃的で、それ以降はそれ以上のパフォーマンスを見せていない。
だが、そんなウオッカと言えどもサイボーグでなく、動物だ。生きているし、心もある。
いつも全能力を出し切れる訳でない。
体調が良くないときもあれば、走りたくないときだってあるだろう。
それは人間だって同じ。
どんな優れたスポーツマンでもスランプなんてないという者はいない。
まして、馬が相手なら、全戦で全能力を出せという方がそもそも難しい話。
ウオッカの場合、不運などが重なり、順調さを欠いたことで、能力を出し切れず思うような結果が残せなかっただけ。
ウオッカは早熟だった説く者は、馬を機械のように見てしまうから、単純にその結果だけしか見ることができないだろう。
ウオッカの巻き返しはきっとあるはずだ。
2008年05月14日(水) 23:56
今年のNHKマイルC。
戦前に挙げられていたレースのポイントとして、前日の降雨によって悪化した馬場がどこまで回復するか、そしてその荒れた馬場を騎手がどう乗りこなすかという「コース取り」があった。
マイナー種牡馬産駒からは、ダートで2勝を挙げたセッカチセージが出走した。
このセッカチセージをまず取り上げたいところだが、ここではセッカチセージだけに焦点を絞った回顧ではなく、このレース全体の回顧をしようと思うので、自分の思い入れだけで“せっかち”に敗者から語ってしまう前に、まずは勝者を称えてからという当然の礼節を重んじて、勝ったディープスカイについてから触れてみようと思う。
注目の馬場状態。やや重まで回復したが、依然として時計のかかるコンディションだった。
有力各馬の中には、パンパンの良馬場の方が持ち味を生かせるだろうという馬が何頭かいた。
その中に、ディープスカイも含まれていた。
だが、そんな杞憂も無意味なほどに、圧倒的な強さを見せつけてくれた。
道中は後方3番手からじっくり追走。
4コーナーでもまだ後方のまま。前走とはまったく違う競馬だ。
四位にここまで余裕を持たせた背景には、まず「この馬の能力に対する自信」、そしてこのレースの「ペース」と「前を走る馬の脚色」、さらに「直線の長さ」を推し量って、この位置からでも十分差し切れるという判断があったのだろう。
そして直線では、馬場の良いギリギリのコースを狙って内を突く。
これは、レース前から狙っていた作戦だったという。直線で各馬が荒れた内を避けて、外に進路をとるだろうという四位の読みがピタリと的中した。
大きくばらけた馬群の内から、四位が満を侍して追い出すと、他馬との力の違いを見せつけるようにパワフルな伸び脚を発揮。唯一懸命に食い下がるブラックシェルをゴール前でさらに突き放し、着差以上の余裕の完勝。
この結果と内容を見て、次走はダービーに挑戦することが決定した。
毎日杯で余裕を持って退けたアドマイヤコマンドが先日の青葉賞を制したことや今回退けたブラックシェルを物差しにしても、距離さえこなせばダービーでも十分勝負になるだろう。
だが、問題は距離だ。
そもそも陣営がこのレースに目標を絞ったのも距離適性を重視してのものだった。
ダービーへの出走に関しても、戦前からこのレースの勝ち方次第という慎重な見解だった。
ホースマンなら誰もが憧れるダービーさえも慎重にさせた要因のひとつが、この馬の血統背景なのだろう。
父アグネスタキオンの産駒は、総じてマイルから二千までの距離を得意とする馬が多い。
重賞19勝のうち、実に16勝がこの距離に該当する。
この距離適性や仕上がりの早さという特徴は、アグネスタキオンの母父ロイヤルスキーの血の影響なのだろう。
この父系に加え、ディープスカイの場合は、スピード血統のDanzig系のChief's Crownを母父に持つ。Chief's Crownは現役時に主にダートのマイル前後の距離で走り、6.5F〜10FのGIを8勝した馬。日本では母父として、他にもアグネスデジタルを輩出している。
このような血統背景を見ると、ディープスカイはまさに千六から二千くらいまでの距離でこその配合と言える。
陣営が敢えてマイル王に目標を絞ったのも頷ける。
この血統背景からは、距離が一気に2400mまで延びることで、強調できるところは何一つ見当たらないが、後は絶対能力の高さでどこまでカバーできるかということになる。
同じくタキオン産駒のダイワスカーレットも本来ならマイルから二千までがベストの馬だが、絶対能力の高さで2500mまでカバーしている。はたしてディープスカイはどうか。
1000mを59.2秒で通過した今年のNHKマイルC。
このレースのペースを判断する上で、単純にこの通過タイムだけを見て、過去13年の1000m通過タイムと比較するなんて愚かなことをしてしまうと、今年のタイムは2番目に遅いのでスローペースということになってしまう。
それもそのはず、今年の場合はやや重で時計のかかる馬場コンディションだった。
さらに、各馬ともスタートから荒れたインを避けるように走ったので、その分のコースロスも加味して考えなければならない。
馬場状態が異なるレースを単純に比較対象にしてしまうのはあまりにナンセンス。
当然ながらそのレースのペースを判断するには、そのレースのラップから判断しなければならない。
よく馬柱にS、M、Hなどペースが記載されているものも、当然のように、そのレースの前後半のラップ差、前後半3Fのラップ差などに基づいて判断されている。
このレースの前後半のタイムが前半46.7、後半47.5秒。上がり3ハロン35.0。
このタイムを見て、スローだという人がはたしているだろうか。
決して極端に速い流れではないが、淀みなく流れた展開だったと言える。
上位5頭は全て後方で脚を溜めた馬が占めていることからもこの事が言える。
2着ブラックシェルは、ここまでチグハグなレースが続き、力を出し切れていなかったが、父クロフネに似て、跳びが大きい走法で器用さに欠けるタイプなので、東京コースに変わりその持ち味が十分に発揮できたことが大きかった。だが、後藤が「勝った馬が強かった」と認めているように、ディープスカイには完全に力負け。それでもこの先を展望する上で大きな価値のあるレースとなった。
また、中間の調整でも目一杯に追って、ダービーへの出走権を賭けたこのレースに全力投球し、万全の状態で挑めたことも好結果に繋がった。
中2週となる次走のダービーでは、目一に仕上げた反動と余力、そして距離適性が鍵を握る。
7年前のこのレースの覇者である父クロフネは、続くダービーでは5着に敗れたが、はたしてその仔はどうか。
母が、テスコボーイ4 x 3のクロスを持ち、短距離を得意としていたオイスターチケット。
全姉シェルズレイもマイルから二千の距離で良積を残した。
東京コースが合っていることは今回ではっきり分かった。はたして距離はもつか。注目だ。
また、次走のダービーでは、NHKマイルCとダービーの二冠にこだわり、両方を全力で獲りに行くという、松国流のスタイルがはたして通用するのかという観点からも見物である。
松国は毎レースきっちりと仕上げ、鍛えながら強くすることには定評があるが、その一方で素質馬を壊してきたという事実もある。
母父にウイニングチケットを持つブラックシェルは、個人的に注目している馬。今後の成長を期待すると同時に、競走馬として最後まで走り抜いて欲しいという願いもある。
3着ダノンゴーゴーは淀み無く流れた展開の中、最後方待機が嵌った。
さらに、馬場状態の酷くないギリギリのインを突いた藤岡佑介の好騎乗によるところも大きい。
前走の敗因を距離に求められたのか14番人気まで人気を落としていたが、今回の走りを見ると、距離は問題なさそう。前走では出遅れた上に、終始外を回る不利が響いたもので、距離が敗因ではなかったことが今回のレースで証明された。
また、この馬の脚質的に、一瞬の切れ味が要求される中山コースより、切れ味だけでなくグングンと加速する持続力が生きる直線の長いコースが合うのだろう。
紛れの少ない東京コースで、さらにこのレースではペースが淀みなく流れたことによって、後方から末脚に賭けるこの馬の持ち味が十分に発揮できた。
ファルコンSでは出遅れながら差し切るなど、元々能力の高さはあった馬。
脚質的に、展開に左右されてしまうこともあるだろうが、短距離路線で今後が楽しみな存在だ。
4着ドリームシグナルも中団より後方でレースを進めた組。
うまく脚を溜めたことが好結果に繋がった。
前々走スプリングSでは先行有利の展開の中、先行したが伸び切れず、さらに前走の皐月賞では大敗していたが、やはりこの馬はマイルが合っているのだろう。
レース後の吉田隼人騎手の「直線はヨレて最後は一杯一杯になりましたが、自分の競馬は出来たので満足しています」とのコメントが示すように、スタミナや底力が上位馬に比べ欠けていた。着順こそ4着だが、勝ち馬から1.2秒差というタイムが示すように、上位馬との力の差は大きい。東京のマイルを乗り切るスタミナ、そしてGIではもうワンパンチ欲しい。
2番人気に支持されたファリダットは、直線で伸びを欠き5着。
「折り合いはついたし、外枠なので外、外を回りました。直線の反応がイマイチ。最後は止まりかけていた」という武豊のコメントが敗因を如実に物語っている。
敗因は、コースロスと距離適性。
武豊が選んだ馬だけあって、能力は上位馬と遜色ないものを持っているが、内を巧みに突いた上位馬に対し、あれだけのコースロスを負っては、距離適性で劣るこの馬にはさすがにつらい。
マイルはこなせる範囲だろうが、今回のようにスタミナも要求される東京のマイルは距離がやや長い印象。父Kingmamboは、Mr. Prospector系の中では異色の距離の融通性の高さが誇っているが、母ビリーヴをはじめスピードタイプの馬が多く出ている母系はスピード色の強い一族。(この一族では、他にもダート短距離重賞3勝ストーンステッパーやスプリント戦4勝モルフェデスペクタがいる)
この馬も母ビリーヴの血が色濃く出ているのか、もう少し短い距離で切れ味を生かすレースが合っていそうだ。
巻き返しを期待され、5番人気に支持されたサダムイダテンは、どうしたのか8着。
スプリングSで大敗を喫した後、一息入れて、このレースを目標に巻き返しを図ってきた。
無理をさせずに一息入れた効果からか、きゃしゃだった馬体も力強さが出てきた。
前走から12キロ増で挑んだ今回は、細江純子をはじめ専門家からも絶賛の声が上がる程に成長し、よく仕上がっていた。戦前から中村師も「これで走らなかったら、もう芝はあきらめる」と公言。それほど、陣営のこのレースに賭ける意気込みは強く、万全に近い状態で挑んだ一戦だった。それだけにこの敗戦の持つ意味は大きい。
これでキッパリ諦めがついたのか、レース後、中村師はダート路線への転向を名言。
フォーティナイナー産駒のこの馬は、血統的に芝もある程度はこなすが、本質的にはダートの方が合っているのかもしれない。同じフォーティナイナー産駒で、血統構成が近い叔父マイネルセレクトのようにダートでその能力が爆発するか。
ダート初戦となる次走(ユニコーンS)に注目。
4番人気で12着と大敗したゴスホークケンは、Storm Cat系らしく緩急の差が激しいレースは不向きで、ワンペースのまま押し切りたいタイプ。その特徴と前走の失敗を踏まえて、内田はペースを下手に落とさず、淀みない流れに持ち込んでうまく逃げていた。にも関わらず、力を出し切れず大敗した原因は、厩舎関係者も言及している精神面の幼さによるものだろう。巻き返しを期待したい。
さて、ようやくセッカチセージについて。
それほど興味のない馬たちについてあれこれと真面目に書いていたら、普通にレース回顧をするのがつまらなくなってきたので、ここからは私らしくユーモアを交えての回顧。
過去5戦中2度出遅れたスタートは、まったく問題なし。
「大変よくできました」の花丸印の合格点。
その後も初めての芝を感じさせない走りで、スンナリ好位にとりつく。
もう1個「大変よくできました」の判を押してあげたいところだったが、ここからがいけない。
この馬の欠点である「精神面の幼さ」がまた出てしまう。
気持ちが必要以上にエキサイトしてしまっているのか行きたがってしまっている。
カツハルが懸命になだめて抑えていたが、口を割って力んだ走り。カツハルが手綱を引いていることもあり、頭の位置も高く首をうまく使えていない。力んで走っているので、フットワークもスムーズさがなく、ぎこちない。
この精神面の欠点は以前から改善されていない。当然、「もっと頑張りましょう」だ。
そんな走りながら先団のまま4コーナーへ。抑え気味に直線を向くと、追い出し開始。
残り300mあたりまでは、先団で食らいついていたが、その後は完全にギブアップ状態。
前半に余計に体力を消耗したためか、スタミナ切れでズルズル後退。
他に、大差をつけられた馬が2頭いたので、ビリは間逃れて16着でゴール。
メンバー中で最重量を誇る雄大な馬体こそ素晴らしいものがあるが、精神的にはまだまだ子供。体だけは中学生くらい大きいが、まだランドセルを背負っている小学生といった感じ。行きたがり、力んで走る姿は、まさに“せっかち”そのもの。この馬にはもっと経験が必要。レースというものをきちんと覚え込ませる必要がある。もっと“どっしり”と落ち着いて走れるようにならなければいけない。
このような完成度の低い馬を、未経験の芝のGIレースに休養明けで出走させたこの陣営もやはり“せっかち”だった。
この馬の素質と可能性を期待する気持ちもよく分かるが、将来性のある馬だけにもっと“どっしり”と構えてじっくり育て上げて欲しいと思う。
それでも、初めて経験する芝、加えてGIの速いペースで、掛かり気味に先行していたあたりは、芝でも通用するスピードがあることを証明してくれた。芝重賞4勝のワコーチカコを祖母に持つ血統背景からも芝で通用する可能性はある。
ただ、今回は渋った馬場も味方した部分もあるだろうから、パンパンの良馬場でどうかという疑問は残る。この馬のパワーを生かすには、やはり現状ではダートの方がいいだろう。
今後の課題は、とにかく精神面の成長。
現状では、「セッカチセージ」という馬名がぴたりと嵌っているような走りをしているが、その雄大な馬体のようにもっとどっしりと落ち着いて、「セッカチセージ」というより「デッカチセージ」の方が似合っているんじゃないかと思わせる程に心身とも成長してもらいたい。
セッカチセージの血統などをメルマガ版の方詳しく紹介します。
メルマガ版では毎週、マイナー種牡馬の産駒のレース結果と
マイナー種牡馬を1頭ピックアップして特集する他、
マイナー種牡馬ランキングやマイナー種牡馬産駒番付も掲載しています。
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戦前に挙げられていたレースのポイントとして、前日の降雨によって悪化した馬場がどこまで回復するか、そしてその荒れた馬場を騎手がどう乗りこなすかという「コース取り」があった。
マイナー種牡馬産駒からは、ダートで2勝を挙げたセッカチセージが出走した。
このセッカチセージをまず取り上げたいところだが、ここではセッカチセージだけに焦点を絞った回顧ではなく、このレース全体の回顧をしようと思うので、自分の思い入れだけで“せっかち”に敗者から語ってしまう前に、まずは勝者を称えてからという当然の礼節を重んじて、勝ったディープスカイについてから触れてみようと思う。
注目の馬場状態。やや重まで回復したが、依然として時計のかかるコンディションだった。
有力各馬の中には、パンパンの良馬場の方が持ち味を生かせるだろうという馬が何頭かいた。
その中に、ディープスカイも含まれていた。
だが、そんな杞憂も無意味なほどに、圧倒的な強さを見せつけてくれた。
道中は後方3番手からじっくり追走。
4コーナーでもまだ後方のまま。前走とはまったく違う競馬だ。
四位にここまで余裕を持たせた背景には、まず「この馬の能力に対する自信」、そしてこのレースの「ペース」と「前を走る馬の脚色」、さらに「直線の長さ」を推し量って、この位置からでも十分差し切れるという判断があったのだろう。
そして直線では、馬場の良いギリギリのコースを狙って内を突く。
これは、レース前から狙っていた作戦だったという。直線で各馬が荒れた内を避けて、外に進路をとるだろうという四位の読みがピタリと的中した。
大きくばらけた馬群の内から、四位が満を侍して追い出すと、他馬との力の違いを見せつけるようにパワフルな伸び脚を発揮。唯一懸命に食い下がるブラックシェルをゴール前でさらに突き放し、着差以上の余裕の完勝。
この結果と内容を見て、次走はダービーに挑戦することが決定した。
毎日杯で余裕を持って退けたアドマイヤコマンドが先日の青葉賞を制したことや今回退けたブラックシェルを物差しにしても、距離さえこなせばダービーでも十分勝負になるだろう。
だが、問題は距離だ。
そもそも陣営がこのレースに目標を絞ったのも距離適性を重視してのものだった。
ダービーへの出走に関しても、戦前からこのレースの勝ち方次第という慎重な見解だった。
ホースマンなら誰もが憧れるダービーさえも慎重にさせた要因のひとつが、この馬の血統背景なのだろう。
父アグネスタキオンの産駒は、総じてマイルから二千までの距離を得意とする馬が多い。
重賞19勝のうち、実に16勝がこの距離に該当する。
この距離適性や仕上がりの早さという特徴は、アグネスタキオンの母父ロイヤルスキーの血の影響なのだろう。
この父系に加え、ディープスカイの場合は、スピード血統のDanzig系のChief's Crownを母父に持つ。Chief's Crownは現役時に主にダートのマイル前後の距離で走り、6.5F〜10FのGIを8勝した馬。日本では母父として、他にもアグネスデジタルを輩出している。
このような血統背景を見ると、ディープスカイはまさに千六から二千くらいまでの距離でこその配合と言える。
陣営が敢えてマイル王に目標を絞ったのも頷ける。
この血統背景からは、距離が一気に2400mまで延びることで、強調できるところは何一つ見当たらないが、後は絶対能力の高さでどこまでカバーできるかということになる。
同じくタキオン産駒のダイワスカーレットも本来ならマイルから二千までがベストの馬だが、絶対能力の高さで2500mまでカバーしている。はたしてディープスカイはどうか。
1000mを59.2秒で通過した今年のNHKマイルC。
このレースのペースを判断する上で、単純にこの通過タイムだけを見て、過去13年の1000m通過タイムと比較するなんて愚かなことをしてしまうと、今年のタイムは2番目に遅いのでスローペースということになってしまう。
それもそのはず、今年の場合はやや重で時計のかかる馬場コンディションだった。
さらに、各馬ともスタートから荒れたインを避けるように走ったので、その分のコースロスも加味して考えなければならない。
馬場状態が異なるレースを単純に比較対象にしてしまうのはあまりにナンセンス。
当然ながらそのレースのペースを判断するには、そのレースのラップから判断しなければならない。
よく馬柱にS、M、Hなどペースが記載されているものも、当然のように、そのレースの前後半のラップ差、前後半3Fのラップ差などに基づいて判断されている。
このレースの前後半のタイムが前半46.7、後半47.5秒。上がり3ハロン35.0。
このタイムを見て、スローだという人がはたしているだろうか。
決して極端に速い流れではないが、淀みなく流れた展開だったと言える。
上位5頭は全て後方で脚を溜めた馬が占めていることからもこの事が言える。
2着ブラックシェルは、ここまでチグハグなレースが続き、力を出し切れていなかったが、父クロフネに似て、跳びが大きい走法で器用さに欠けるタイプなので、東京コースに変わりその持ち味が十分に発揮できたことが大きかった。だが、後藤が「勝った馬が強かった」と認めているように、ディープスカイには完全に力負け。それでもこの先を展望する上で大きな価値のあるレースとなった。
また、中間の調整でも目一杯に追って、ダービーへの出走権を賭けたこのレースに全力投球し、万全の状態で挑めたことも好結果に繋がった。
中2週となる次走のダービーでは、目一に仕上げた反動と余力、そして距離適性が鍵を握る。
7年前のこのレースの覇者である父クロフネは、続くダービーでは5着に敗れたが、はたしてその仔はどうか。
母が、テスコボーイ4 x 3のクロスを持ち、短距離を得意としていたオイスターチケット。
全姉シェルズレイもマイルから二千の距離で良積を残した。
東京コースが合っていることは今回ではっきり分かった。はたして距離はもつか。注目だ。
また、次走のダービーでは、NHKマイルCとダービーの二冠にこだわり、両方を全力で獲りに行くという、松国流のスタイルがはたして通用するのかという観点からも見物である。
松国は毎レースきっちりと仕上げ、鍛えながら強くすることには定評があるが、その一方で素質馬を壊してきたという事実もある。
母父にウイニングチケットを持つブラックシェルは、個人的に注目している馬。今後の成長を期待すると同時に、競走馬として最後まで走り抜いて欲しいという願いもある。
3着ダノンゴーゴーは淀み無く流れた展開の中、最後方待機が嵌った。
さらに、馬場状態の酷くないギリギリのインを突いた藤岡佑介の好騎乗によるところも大きい。
前走の敗因を距離に求められたのか14番人気まで人気を落としていたが、今回の走りを見ると、距離は問題なさそう。前走では出遅れた上に、終始外を回る不利が響いたもので、距離が敗因ではなかったことが今回のレースで証明された。
また、この馬の脚質的に、一瞬の切れ味が要求される中山コースより、切れ味だけでなくグングンと加速する持続力が生きる直線の長いコースが合うのだろう。
紛れの少ない東京コースで、さらにこのレースではペースが淀みなく流れたことによって、後方から末脚に賭けるこの馬の持ち味が十分に発揮できた。
ファルコンSでは出遅れながら差し切るなど、元々能力の高さはあった馬。
脚質的に、展開に左右されてしまうこともあるだろうが、短距離路線で今後が楽しみな存在だ。
4着ドリームシグナルも中団より後方でレースを進めた組。
うまく脚を溜めたことが好結果に繋がった。
前々走スプリングSでは先行有利の展開の中、先行したが伸び切れず、さらに前走の皐月賞では大敗していたが、やはりこの馬はマイルが合っているのだろう。
レース後の吉田隼人騎手の「直線はヨレて最後は一杯一杯になりましたが、自分の競馬は出来たので満足しています」とのコメントが示すように、スタミナや底力が上位馬に比べ欠けていた。着順こそ4着だが、勝ち馬から1.2秒差というタイムが示すように、上位馬との力の差は大きい。東京のマイルを乗り切るスタミナ、そしてGIではもうワンパンチ欲しい。
2番人気に支持されたファリダットは、直線で伸びを欠き5着。
「折り合いはついたし、外枠なので外、外を回りました。直線の反応がイマイチ。最後は止まりかけていた」という武豊のコメントが敗因を如実に物語っている。
敗因は、コースロスと距離適性。
武豊が選んだ馬だけあって、能力は上位馬と遜色ないものを持っているが、内を巧みに突いた上位馬に対し、あれだけのコースロスを負っては、距離適性で劣るこの馬にはさすがにつらい。
マイルはこなせる範囲だろうが、今回のようにスタミナも要求される東京のマイルは距離がやや長い印象。父Kingmamboは、Mr. Prospector系の中では異色の距離の融通性の高さが誇っているが、母ビリーヴをはじめスピードタイプの馬が多く出ている母系はスピード色の強い一族。(この一族では、他にもダート短距離重賞3勝ストーンステッパーやスプリント戦4勝モルフェデスペクタがいる)
この馬も母ビリーヴの血が色濃く出ているのか、もう少し短い距離で切れ味を生かすレースが合っていそうだ。
巻き返しを期待され、5番人気に支持されたサダムイダテンは、どうしたのか8着。
スプリングSで大敗を喫した後、一息入れて、このレースを目標に巻き返しを図ってきた。
無理をさせずに一息入れた効果からか、きゃしゃだった馬体も力強さが出てきた。
前走から12キロ増で挑んだ今回は、細江純子をはじめ専門家からも絶賛の声が上がる程に成長し、よく仕上がっていた。戦前から中村師も「これで走らなかったら、もう芝はあきらめる」と公言。それほど、陣営のこのレースに賭ける意気込みは強く、万全に近い状態で挑んだ一戦だった。それだけにこの敗戦の持つ意味は大きい。
これでキッパリ諦めがついたのか、レース後、中村師はダート路線への転向を名言。
フォーティナイナー産駒のこの馬は、血統的に芝もある程度はこなすが、本質的にはダートの方が合っているのかもしれない。同じフォーティナイナー産駒で、血統構成が近い叔父マイネルセレクトのようにダートでその能力が爆発するか。
ダート初戦となる次走(ユニコーンS)に注目。
4番人気で12着と大敗したゴスホークケンは、Storm Cat系らしく緩急の差が激しいレースは不向きで、ワンペースのまま押し切りたいタイプ。その特徴と前走の失敗を踏まえて、内田はペースを下手に落とさず、淀みない流れに持ち込んでうまく逃げていた。にも関わらず、力を出し切れず大敗した原因は、厩舎関係者も言及している精神面の幼さによるものだろう。巻き返しを期待したい。
さて、ようやくセッカチセージについて。
それほど興味のない馬たちについてあれこれと真面目に書いていたら、普通にレース回顧をするのがつまらなくなってきたので、ここからは私らしくユーモアを交えての回顧。
過去5戦中2度出遅れたスタートは、まったく問題なし。
「大変よくできました」の花丸印の合格点。
その後も初めての芝を感じさせない走りで、スンナリ好位にとりつく。
もう1個「大変よくできました」の判を押してあげたいところだったが、ここからがいけない。
この馬の欠点である「精神面の幼さ」がまた出てしまう。
気持ちが必要以上にエキサイトしてしまっているのか行きたがってしまっている。
カツハルが懸命になだめて抑えていたが、口を割って力んだ走り。カツハルが手綱を引いていることもあり、頭の位置も高く首をうまく使えていない。力んで走っているので、フットワークもスムーズさがなく、ぎこちない。
この精神面の欠点は以前から改善されていない。当然、「もっと頑張りましょう」だ。
そんな走りながら先団のまま4コーナーへ。抑え気味に直線を向くと、追い出し開始。
残り300mあたりまでは、先団で食らいついていたが、その後は完全にギブアップ状態。
前半に余計に体力を消耗したためか、スタミナ切れでズルズル後退。
他に、大差をつけられた馬が2頭いたので、ビリは間逃れて16着でゴール。
メンバー中で最重量を誇る雄大な馬体こそ素晴らしいものがあるが、精神的にはまだまだ子供。体だけは中学生くらい大きいが、まだランドセルを背負っている小学生といった感じ。行きたがり、力んで走る姿は、まさに“せっかち”そのもの。この馬にはもっと経験が必要。レースというものをきちんと覚え込ませる必要がある。もっと“どっしり”と落ち着いて走れるようにならなければいけない。
このような完成度の低い馬を、未経験の芝のGIレースに休養明けで出走させたこの陣営もやはり“せっかち”だった。
この馬の素質と可能性を期待する気持ちもよく分かるが、将来性のある馬だけにもっと“どっしり”と構えてじっくり育て上げて欲しいと思う。
それでも、初めて経験する芝、加えてGIの速いペースで、掛かり気味に先行していたあたりは、芝でも通用するスピードがあることを証明してくれた。芝重賞4勝のワコーチカコを祖母に持つ血統背景からも芝で通用する可能性はある。
ただ、今回は渋った馬場も味方した部分もあるだろうから、パンパンの良馬場でどうかという疑問は残る。この馬のパワーを生かすには、やはり現状ではダートの方がいいだろう。
今後の課題は、とにかく精神面の成長。
現状では、「セッカチセージ」という馬名がぴたりと嵌っているような走りをしているが、その雄大な馬体のようにもっとどっしりと落ち着いて、「セッカチセージ」というより「デッカチセージ」の方が似合っているんじゃないかと思わせる程に心身とも成長してもらいたい。
セッカチセージの血統などをメルマガ版の方詳しく紹介します。
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2008年01月08日(火) 23:27
メルマガ版の方では2回にわたり大きく取り上げたことで、読者の間にもその名が浸透してきたハナヤッコ。
この一度でも目にしたり耳にしたらすぐに覚えてしまうような馴染みやすい名を持つハナヤッコはスマートボーイ産駒の3歳牝馬。
そのハナヤッコが初勝利を目指して日曜の未勝利戦に出走した。
ここ2戦は続けて2着に入り、初勝利を掴みかけていただけにこれまで以上に期待をしていたが、結果は何と大差のシンガリ負け。
今回の敗因は明らかだ。
それはオーバーペース。飛ばし過ぎ。
今回、逃げたハナヤッコが踏んだラップは、前半3F〜5Fまでが36.1-49.0-61.8というもの。
このペースがどれだけ速いかは以下の比較参考レースの同じ前半3F〜5Fのラップタイムと比べるとよく分かる。
36.1-49.0-61.8 今回
38.0-51.9-65.4 好位から2着に入った前走
37.4-51.0-64.5 逃げ粘った2走前
36.4-50.3-63.0 同日に行われた別の3歳未勝利ダート1800戦
36.0-48.6-60.8 同日に行われた古馬1000万下条件特別戦初茜賞(ダート1800)
自身が好走した前2走と比較して5F目では2.7秒から3.6秒も速いだけでなく、同日の他の3歳未勝利戦と比べても1秒以上速く、そして何とそのラップタイムは同日の古馬の1000万下条件とほぼ同じラップタイムだ。
つまり、今回のレースでハナヤッコはまだ3歳になったばかりの未勝利馬ながら古馬の1000万下条件に匹敵する程のラップで逃げていたことになる。
これではハナヤッコに限らず、同世代の馬のほとんどが最後まで息がもたないだろう。
では、なぜ千葉直人騎手はこのような無謀とも言えるペースで逃げてしまったのか。
特に他の馬が競りかけてきた馬もいなかったのに。
千葉直人騎手がデビューして2年にも満たない未熟な騎手であるということが理由としてもちろんあるだろう。
だが、それだけで片付けてしまってはそれまでだ。そんな単純な理由だけではないはずだ。
なぜならいかに千葉直人騎手が未熟な若手騎手と言えども、これまで実戦で300回以上も騎乗しているプロの騎手だ。また千葉直人騎手はここ2戦、このハナヤッコに騎乗し、実に冷静で絶妙なペース配分のレース運びでこの馬に好結果をもたらしている。少なくともこの馬の場合、どのくらいのペースで走れば、最後まで踏ん張れるのかあるいはこの位の脚は使ってくれるだろうという感触は掴んでいるはずだ。
プロの騎手は調教やレースで経験を積むことで、体内に感覚的な時計が備わってくると言われる。
千葉直人騎手の体内時計はまだ高い精度が備わっていないだろうが、それにしてもそれを大きく狂わせてしまった原因は何なのか。
私はこう考える。
その原因はハナヤッコの成長にあるのではないかと。
ハナヤッコが肉体的に成長し、つくべきところに筋肉がついてきたことによってフットワークも以前と変わり、これが千葉直人騎手のこの馬に対して掴んでいる感覚を狂わせてしまったのではないか。
つまり、千葉直人騎手が感じているスピード以上にこの馬が速いペースで走っていたということだ。
調教でもフットワークの大きな馬はピッチ走法の馬よりスピード感を感じないため、乗っている騎手が感じるスピード以上に速い時計が出てしまい、予定していた調教より強い負荷をかけてしまったなどという追い切りの記事をたまに目にする。
ハナヤッコもトモなどに筋肉がついたことで蹴る力が強くなり、そのフットワークが大きくなったことで千葉直人騎手は乗っていてあれほどのハイペースになるスピード感を感じなかったのではないだろうか。そしてそれがあのオーバーペースの原因となってしまった・・。
また、千葉直人騎手はハナヤッコの乗り味が以前より良くなっていることをレース前から感じ、「これなら勝てるのでは」というこれまでにない勝負に対する色気が出てしまい、レースでは知らず知らずのうちに強気の競馬になってしまったという背景があるのかもしれない。
どんな理由であれ今回の千葉直人騎手は騎乗ミスをしてしまったことには変わりはない。
今回の暴走が次走に向けてプラス面とマイナス面を生んだ。
プラス面は今回、自身の限界を超えるペースで走ったことで、この馬の心肺機能が強化された可能性があること。
(続く)
少し長くなったのでこの続きはメルマガ版の方でじっくり掲載しますので、よかったら読んでみてください。
さて、残念ながらハナヤッコは大敗してしまったが、私にとっては嬉しい出来事があった。
ハナヤッコの生産者の方からメールを頂いたのだ。
「ハナヤッコ」で検索し、このブログに辿り着き、それ以来ブログとメルマガを愛読してくれているというのだ。
あのメルマガを発行していて、一番良かったなと感じるのはやはり読者から感想や意見などのメールを頂いた時だ。
これまでいろんな人からメール頂いた。
中には競馬関係者や著名な方もいた。
思えば、ハナヤッコを担当している厩務員の林さんから初めてメールを頂いたのもちょうど昨年の年明けだった。
私が書いたサチノスイーティーの記事を目にして、メールを送ってくれたのだ。
1頭の馬が繋いでくれた縁。
不思議なものである。
私がサチノスイーティーを応援し、その記事を書いていなければ、林さんとの縁もまずなかっただろう。そして、林さんとの縁がなければ、私がハナヤッコというまだ未勝利戦すら勝ち上がっていない馬にこれほどまでに注目して熱心に応援することもまずなかったはずだ。
となると、ハナヤッコの生産者の方からメールを頂くこともなかったはずだ。
人の縁はどこでどう繋がるか分からない。
不思議なものだと感じると同時にとても素晴らしいことだと思う。
こういうことがあるから私はあのメルマガを続けていられるのだと思う。
最後に生産者の元茂さんと担当厩務員の林さんから頂いたハナヤッコの1歳秋と現在の写真を掲載しておく。
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この一度でも目にしたり耳にしたらすぐに覚えてしまうような馴染みやすい名を持つハナヤッコはスマートボーイ産駒の3歳牝馬。
そのハナヤッコが初勝利を目指して日曜の未勝利戦に出走した。
ここ2戦は続けて2着に入り、初勝利を掴みかけていただけにこれまで以上に期待をしていたが、結果は何と大差のシンガリ負け。
今回の敗因は明らかだ。
それはオーバーペース。飛ばし過ぎ。
今回、逃げたハナヤッコが踏んだラップは、前半3F〜5Fまでが36.1-49.0-61.8というもの。
このペースがどれだけ速いかは以下の比較参考レースの同じ前半3F〜5Fのラップタイムと比べるとよく分かる。
36.1-49.0-61.8 今回
38.0-51.9-65.4 好位から2着に入った前走
37.4-51.0-64.5 逃げ粘った2走前
36.4-50.3-63.0 同日に行われた別の3歳未勝利ダート1800戦
36.0-48.6-60.8 同日に行われた古馬1000万下条件特別戦初茜賞(ダート1800)
自身が好走した前2走と比較して5F目では2.7秒から3.6秒も速いだけでなく、同日の他の3歳未勝利戦と比べても1秒以上速く、そして何とそのラップタイムは同日の古馬の1000万下条件とほぼ同じラップタイムだ。
つまり、今回のレースでハナヤッコはまだ3歳になったばかりの未勝利馬ながら古馬の1000万下条件に匹敵する程のラップで逃げていたことになる。
これではハナヤッコに限らず、同世代の馬のほとんどが最後まで息がもたないだろう。
では、なぜ千葉直人騎手はこのような無謀とも言えるペースで逃げてしまったのか。
特に他の馬が競りかけてきた馬もいなかったのに。
千葉直人騎手がデビューして2年にも満たない未熟な騎手であるということが理由としてもちろんあるだろう。
だが、それだけで片付けてしまってはそれまでだ。そんな単純な理由だけではないはずだ。
なぜならいかに千葉直人騎手が未熟な若手騎手と言えども、これまで実戦で300回以上も騎乗しているプロの騎手だ。また千葉直人騎手はここ2戦、このハナヤッコに騎乗し、実に冷静で絶妙なペース配分のレース運びでこの馬に好結果をもたらしている。少なくともこの馬の場合、どのくらいのペースで走れば、最後まで踏ん張れるのかあるいはこの位の脚は使ってくれるだろうという感触は掴んでいるはずだ。
プロの騎手は調教やレースで経験を積むことで、体内に感覚的な時計が備わってくると言われる。
千葉直人騎手の体内時計はまだ高い精度が備わっていないだろうが、それにしてもそれを大きく狂わせてしまった原因は何なのか。
私はこう考える。
その原因はハナヤッコの成長にあるのではないかと。
ハナヤッコが肉体的に成長し、つくべきところに筋肉がついてきたことによってフットワークも以前と変わり、これが千葉直人騎手のこの馬に対して掴んでいる感覚を狂わせてしまったのではないか。
つまり、千葉直人騎手が感じているスピード以上にこの馬が速いペースで走っていたということだ。
調教でもフットワークの大きな馬はピッチ走法の馬よりスピード感を感じないため、乗っている騎手が感じるスピード以上に速い時計が出てしまい、予定していた調教より強い負荷をかけてしまったなどという追い切りの記事をたまに目にする。
ハナヤッコもトモなどに筋肉がついたことで蹴る力が強くなり、そのフットワークが大きくなったことで千葉直人騎手は乗っていてあれほどのハイペースになるスピード感を感じなかったのではないだろうか。そしてそれがあのオーバーペースの原因となってしまった・・。
また、千葉直人騎手はハナヤッコの乗り味が以前より良くなっていることをレース前から感じ、「これなら勝てるのでは」というこれまでにない勝負に対する色気が出てしまい、レースでは知らず知らずのうちに強気の競馬になってしまったという背景があるのかもしれない。
どんな理由であれ今回の千葉直人騎手は騎乗ミスをしてしまったことには変わりはない。
今回の暴走が次走に向けてプラス面とマイナス面を生んだ。
プラス面は今回、自身の限界を超えるペースで走ったことで、この馬の心肺機能が強化された可能性があること。
(続く)
少し長くなったのでこの続きはメルマガ版の方でじっくり掲載しますので、よかったら読んでみてください。
さて、残念ながらハナヤッコは大敗してしまったが、私にとっては嬉しい出来事があった。
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あのメルマガを発行していて、一番良かったなと感じるのはやはり読者から感想や意見などのメールを頂いた時だ。
これまでいろんな人からメール頂いた。
中には競馬関係者や著名な方もいた。
思えば、ハナヤッコを担当している厩務員の林さんから初めてメールを頂いたのもちょうど昨年の年明けだった。
私が書いたサチノスイーティーの記事を目にして、メールを送ってくれたのだ。
1頭の馬が繋いでくれた縁。
不思議なものである。
私がサチノスイーティーを応援し、その記事を書いていなければ、林さんとの縁もまずなかっただろう。そして、林さんとの縁がなければ、私がハナヤッコというまだ未勝利戦すら勝ち上がっていない馬にこれほどまでに注目して熱心に応援することもまずなかったはずだ。
となると、ハナヤッコの生産者の方からメールを頂くこともなかったはずだ。
人の縁はどこでどう繋がるか分からない。
不思議なものだと感じると同時にとても素晴らしいことだと思う。
こういうことがあるから私はあのメルマガを続けていられるのだと思う。
最後に生産者の元茂さんと担当厩務員の林さんから頂いたハナヤッコの1歳秋と現在の写真を掲載しておく。
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2007年11月20日(火) 23:34
GI4勝馬ダイワメジャーの底力を見せつけられたレースだった。
そしてそれを引き出したアンカツの持ち前の思い切りの良い騎乗も見事だった。
「天皇賞は大事に乗りすぎたし、負けてもいいから強引なレースをしようと強めに当たって出して行った」とレース後にアンカツが語ったように、昨年同様に積極的な早め早めの競馬で直線で早めに抜け出す。
外からスーパーホーネットが強襲してきたが、ここからがダイワメジャーの真骨頂。
勢いではスーパーホーネットの方が完全に上回っていたが、「ここからが本当の勝負」とばかりにもうひと伸びした。
昨年のこの時期は飛ぶ鳥を落とす勢いだったが、今秋はここまで2連敗。
GI4勝の強豪もさすがに衰えは隠せないという見方もあったが、それを完全に一蹴した内容だった。
位置取り、仕掛けどころとレース内容が昨年とまったく同じなら勝ちタイムも昨年とまったく同じ。
衰え知らずといった感じだが、ダイワメジャーも既に6歳。
今年限りで現役を引退し、種牡馬入りすることが既に決まっているが賢明な判断だろう。
喉鳴りを克服し、GI5勝という素晴らしい成績を残したダイワメジャーは立派という言葉に尽きる。
スーパーホーネットは惜しかった・・
「勝てると思ったけど、体を併せる形になってから、向こう(メジャー)がしぶとかった」という藤岡佑介の言葉通り、直線のこの馬の勢いからは念願のGI制覇を掴むかに思えた。
だが、ダイワメジャーに体を併せてしまったことで、それを掴み損ねた。
もし馬体が離れていたら、毎日王冠のチョウサンのように差し切っていたかもしれない。
それでも、藤岡佑介はうまく乗った。道中の位置取りも申し分ないし、直線に入ってもダイワに馬体を併せないように途中で左ムチから右ムチに持ち替え、冷静に最後の詰めも怠らなかった。
だが、アンカツが背後に迫り来る気配を察知し、右ムチを一発放って徐々にダイワが外に寄せてきたことで相手にうまく併せ馬に持ち込まれてしまった。
勝敗を決する相手となるだろう馬に直線で馬体を併せに行くという騎乗はアンカツがダイワメジャーに騎乗したときにはいつもやることだが、アンカツの巧さにしてやられた形だ。
敗れはしたが、スーパーホーネットはここにきてグングン力をつけてきている。
来年はマイルなら念願のGI制覇も可能だろう。
二千では明らかに長いので、天皇賞・秋に挑戦とか変な色気を出さずに、マイル前後の距離で切れ味を活かす競馬に磨きをかけていって欲しい。
そうすれば、念願のGI制覇はより近づくだろう。
そして、この馬にはロドリゴデトリアーノの後継になってもらいたい。
直線で大外から強襲し、3着に入ったスズカフェニックスはよくやった。
馬インフルエンザの影響から調整が遅れ、絶好調とまではいかない状態でここまでやれるのだからやはり能力はGI馬に違わないものを持っている。
当初はスプリンターズSに出走する予定はなかったように、本来はスプリントよりマイルの方が合っているタイプだけに、来春は安田記念が大目標となるだろう。
掛かり癖が直らずに距離を徐々に短縮してきたという経緯があるこの馬にとって今後の課題は精神面の強化。
精神的に成長すれば、二千も十分にこなせるはずなので、秋は天皇賞も視野に入ってくる。
来年はさらなる飛躍を狙うと同時に、6歳という年齢からも競走馬としての集大成的な勝負の年になるだろう。
アグネスアークは故障の影響か直線の最後で伸びを欠いてしまった。
レース後に左前繋靱帯炎が判明したが、ここまでの押せ押せのローテーションが祟ってしまったか・・
前走が初のGIで2着に入ったとは言え、直線の不利で悔しい思いをしただけに、次こそはという思いと同時にあと1戦なら何とか持ちこたえてくれるという願望が陣営にはあったのだろうが、ただでさえ脚にボルトが入っている馬なので、もっと慎重にレースを使うべきだった。
調教師としてはまだ経験の浅い河内師にとって、今回はいい教訓になったはず。
幸い、競走生命に支障をきたすような大事には至らなかったので、ほっとした。
とにかく怪我の完治に専念し、万全の状態でターフに戻ってきてもらいたい。
5着カンパニーは力負けではない。位置取りのまずさが全てだった。
「行きっぷりがいまひとつでした。中団からの競馬をしたかったのですが、原因はわかりません」(音無調教師)、「全然進まんかった。久々の右回りに戸惑ったとしか思えない」(福永騎手)という陣営の談話があるように、戦前に思い描いていた競馬ができず、不本意な結果に終わった。ダイワメジャーというしっかりした末脚の繰り出せる有力な先行馬がいたこのレースを勝つためには後方で脚を溜めるのでなく、ある程度の位置、つまりダイワメジャーを直線で交わせる位置につけたかったはず。だが、あまりの行きっぷりの悪さに最後は外を回す余裕がなくなり、仕方なく荒れた内を突かざるを得なくなってしまったのだろう。逃げたフサイチリシャールと好位から早めに仕掛けたマイネルシーガルなどの逃げ先行馬が潰れたことから単純に考えてしまうと前崩れの展開と写ってしまうが、レースの前半と後半のラップタイムがまったく同じということからも決して前が厳しい展開ではなかっただけに、中団からでも競馬のできるこの馬にとっては位置取りが後ろ過ぎた。
スタート直後から既に行きっぷりは悪かったので、右回りが敗因とは言い切れない。
この馬はこれまでカイ食いが細くなりがちでレースで使い減りしやすいタイプだったが、加齢とともにそれも徐々に解消され、6歳となった今年はいよいよ充実期に入ったと思われていたが、厳しい競馬となった天皇賞の反動が出たのかもしれない。
今回はスタート直後からレースに対する前向きさや気迫が感じられない走りだった。
目に見えない疲れなのか、あるいは精神的疲労か、とにかくこの馬は心身とももっとタフになる必要がある。
ちょうどダイワメジャーが心身ともタフになって王道を突き進んだように、GI級の能力を持つこの馬が欠けているものが、そういったタフさ、勝負強さだろう。
そういったものが備ったときにGIのタイトルを手にできるはず。
来年は7歳となるが血統的に晩成タイプなので来年こそ本当に勝負の年になる。
6着キングストレイルは、京成杯の内容、勝ちタイムから本来ならもう少しやれてもいい馬。
休み明けをマイナス14キロで快勝し、その後に押せ押せでレースを使い、今回が秋4戦目。状態のピークは過ぎていたのだろう。だが、この馬はここまで休養を挟みながら使われており、2歳8月という早いデビューながらまだ19戦しか出走していないので、まだ良くなる余地が十分にある。本格化はまだ先だろう。SS×ノーザンテーストという配合からも成長力は十分に期待できる。今後に期待がもてる馬。
7着エイシンドーバーはポン駆けが利くタイプとは言え、休み明けのぶっつけ本番ながらよく健闘した。ただ、GIではワンパンチ足りないのは明らか。GIでは伏兵の域から脱するのは厳しいだろう。
8着ベクラックスは位置取りが後ろ過ぎた。
硬い馬場を得意とし、日本向きとのことだったが、最後はメンバー中3番目に速い上がりタイムで追い込んでおり、その一端を見せてくれた。
うまく流れに乗れていれば、もっといい結果が出ていただろう。
9着ピンクカメオはこの程度だろう。力は出し切っている。
馬場が悪ければもう少しやれるのだろうが、良馬場のGIではあまりに荷が重過ぎる。
この馬はたまたまいろんな条件が嵌ってGIを勝ったが、レベルの高い3歳牝馬の中にあって、上位の馬とは1ランクも2ランクも下の実力しかない。
今後は血統的に合いそうなダート路線に矛先を変えた方がおもしろそう。
10着マイネルシーガルはダイワメジャーに真っ向勝負を挑んだ結果なので仕方ない。
小細工せずにこの馬の持ち味を出そうと堂々と勝ちにいった後藤の騎乗も天晴れ。
最初から勝負を捨てて掲示板狙いというような乗り方だったら、もっと上の着順にも入れただろうが、ファンも納得のいくレースだったはず。
2歳時から完成度の高い馬だったが、まだ上積みは望める。
ただ、GIでは底力が不足していることは否めない。
16着ローレルゲレイロは深刻だ。
立て直すのは厳しそう。
どう考えても2歳6月のデビューからダービーまで使いすぎ。
そんなに生き急がせなくても・・という感じ。
血統的には決して早熟ではないが、典型的な早熟馬として終わりそう。
18着ローエングリンはここまで本当によくやった。
お疲れ様と言いたい。
気持ちよく走らせたときは強さを発揮したが、この馬はもっと精神的にもレースぶりでも器用さがあれば、もっと良い成績を残せたはず。
ついにGIタイトルは獲れなかったが、能力は間違いなくGI級だった。
その血統は超一流だけに種牡馬としても成功できるだろう。
SS産駒の肌馬とも配合できるし(ただしHaloの4×3というクロスが生じる)、 Sadler's Wells、Mill Reefといった欧州の底力ある血が入っているのも魅力十分。
何年後かにマイナー種牡馬に仲間入りなんてことはまず無いはず。
そう願っている。
そしてそれを引き出したアンカツの持ち前の思い切りの良い騎乗も見事だった。
「天皇賞は大事に乗りすぎたし、負けてもいいから強引なレースをしようと強めに当たって出して行った」とレース後にアンカツが語ったように、昨年同様に積極的な早め早めの競馬で直線で早めに抜け出す。
外からスーパーホーネットが強襲してきたが、ここからがダイワメジャーの真骨頂。
勢いではスーパーホーネットの方が完全に上回っていたが、「ここからが本当の勝負」とばかりにもうひと伸びした。
昨年のこの時期は飛ぶ鳥を落とす勢いだったが、今秋はここまで2連敗。
GI4勝の強豪もさすがに衰えは隠せないという見方もあったが、それを完全に一蹴した内容だった。
位置取り、仕掛けどころとレース内容が昨年とまったく同じなら勝ちタイムも昨年とまったく同じ。
衰え知らずといった感じだが、ダイワメジャーも既に6歳。
今年限りで現役を引退し、種牡馬入りすることが既に決まっているが賢明な判断だろう。
喉鳴りを克服し、GI5勝という素晴らしい成績を残したダイワメジャーは立派という言葉に尽きる。
スーパーホーネットは惜しかった・・
「勝てると思ったけど、体を併せる形になってから、向こう(メジャー)がしぶとかった」という藤岡佑介の言葉通り、直線のこの馬の勢いからは念願のGI制覇を掴むかに思えた。
だが、ダイワメジャーに体を併せてしまったことで、それを掴み損ねた。
もし馬体が離れていたら、毎日王冠のチョウサンのように差し切っていたかもしれない。
それでも、藤岡佑介はうまく乗った。道中の位置取りも申し分ないし、直線に入ってもダイワに馬体を併せないように途中で左ムチから右ムチに持ち替え、冷静に最後の詰めも怠らなかった。
だが、アンカツが背後に迫り来る気配を察知し、右ムチを一発放って徐々にダイワが外に寄せてきたことで相手にうまく併せ馬に持ち込まれてしまった。
勝敗を決する相手となるだろう馬に直線で馬体を併せに行くという騎乗はアンカツがダイワメジャーに騎乗したときにはいつもやることだが、アンカツの巧さにしてやられた形だ。
敗れはしたが、スーパーホーネットはここにきてグングン力をつけてきている。
来年はマイルなら念願のGI制覇も可能だろう。
二千では明らかに長いので、天皇賞・秋に挑戦とか変な色気を出さずに、マイル前後の距離で切れ味を活かす競馬に磨きをかけていって欲しい。
そうすれば、念願のGI制覇はより近づくだろう。
そして、この馬にはロドリゴデトリアーノの後継になってもらいたい。
直線で大外から強襲し、3着に入ったスズカフェニックスはよくやった。
馬インフルエンザの影響から調整が遅れ、絶好調とまではいかない状態でここまでやれるのだからやはり能力はGI馬に違わないものを持っている。
当初はスプリンターズSに出走する予定はなかったように、本来はスプリントよりマイルの方が合っているタイプだけに、来春は安田記念が大目標となるだろう。
掛かり癖が直らずに距離を徐々に短縮してきたという経緯があるこの馬にとって今後の課題は精神面の強化。
精神的に成長すれば、二千も十分にこなせるはずなので、秋は天皇賞も視野に入ってくる。
来年はさらなる飛躍を狙うと同時に、6歳という年齢からも競走馬としての集大成的な勝負の年になるだろう。
アグネスアークは故障の影響か直線の最後で伸びを欠いてしまった。
レース後に左前繋靱帯炎が判明したが、ここまでの押せ押せのローテーションが祟ってしまったか・・
前走が初のGIで2着に入ったとは言え、直線の不利で悔しい思いをしただけに、次こそはという思いと同時にあと1戦なら何とか持ちこたえてくれるという願望が陣営にはあったのだろうが、ただでさえ脚にボルトが入っている馬なので、もっと慎重にレースを使うべきだった。
調教師としてはまだ経験の浅い河内師にとって、今回はいい教訓になったはず。
幸い、競走生命に支障をきたすような大事には至らなかったので、ほっとした。
とにかく怪我の完治に専念し、万全の状態でターフに戻ってきてもらいたい。
5着カンパニーは力負けではない。位置取りのまずさが全てだった。
「行きっぷりがいまひとつでした。中団からの競馬をしたかったのですが、原因はわかりません」(音無調教師)、「全然進まんかった。久々の右回りに戸惑ったとしか思えない」(福永騎手)という陣営の談話があるように、戦前に思い描いていた競馬ができず、不本意な結果に終わった。ダイワメジャーというしっかりした末脚の繰り出せる有力な先行馬がいたこのレースを勝つためには後方で脚を溜めるのでなく、ある程度の位置、つまりダイワメジャーを直線で交わせる位置につけたかったはず。だが、あまりの行きっぷりの悪さに最後は外を回す余裕がなくなり、仕方なく荒れた内を突かざるを得なくなってしまったのだろう。逃げたフサイチリシャールと好位から早めに仕掛けたマイネルシーガルなどの逃げ先行馬が潰れたことから単純に考えてしまうと前崩れの展開と写ってしまうが、レースの前半と後半のラップタイムがまったく同じということからも決して前が厳しい展開ではなかっただけに、中団からでも競馬のできるこの馬にとっては位置取りが後ろ過ぎた。
スタート直後から既に行きっぷりは悪かったので、右回りが敗因とは言い切れない。
この馬はこれまでカイ食いが細くなりがちでレースで使い減りしやすいタイプだったが、加齢とともにそれも徐々に解消され、6歳となった今年はいよいよ充実期に入ったと思われていたが、厳しい競馬となった天皇賞の反動が出たのかもしれない。
今回はスタート直後からレースに対する前向きさや気迫が感じられない走りだった。
目に見えない疲れなのか、あるいは精神的疲労か、とにかくこの馬は心身とももっとタフになる必要がある。
ちょうどダイワメジャーが心身ともタフになって王道を突き進んだように、GI級の能力を持つこの馬が欠けているものが、そういったタフさ、勝負強さだろう。
そういったものが備ったときにGIのタイトルを手にできるはず。
来年は7歳となるが血統的に晩成タイプなので来年こそ本当に勝負の年になる。
6着キングストレイルは、京成杯の内容、勝ちタイムから本来ならもう少しやれてもいい馬。
休み明けをマイナス14キロで快勝し、その後に押せ押せでレースを使い、今回が秋4戦目。状態のピークは過ぎていたのだろう。だが、この馬はここまで休養を挟みながら使われており、2歳8月という早いデビューながらまだ19戦しか出走していないので、まだ良くなる余地が十分にある。本格化はまだ先だろう。SS×ノーザンテーストという配合からも成長力は十分に期待できる。今後に期待がもてる馬。
7着エイシンドーバーはポン駆けが利くタイプとは言え、休み明けのぶっつけ本番ながらよく健闘した。ただ、GIではワンパンチ足りないのは明らか。GIでは伏兵の域から脱するのは厳しいだろう。
8着ベクラックスは位置取りが後ろ過ぎた。
硬い馬場を得意とし、日本向きとのことだったが、最後はメンバー中3番目に速い上がりタイムで追い込んでおり、その一端を見せてくれた。
うまく流れに乗れていれば、もっといい結果が出ていただろう。
9着ピンクカメオはこの程度だろう。力は出し切っている。
馬場が悪ければもう少しやれるのだろうが、良馬場のGIではあまりに荷が重過ぎる。
この馬はたまたまいろんな条件が嵌ってGIを勝ったが、レベルの高い3歳牝馬の中にあって、上位の馬とは1ランクも2ランクも下の実力しかない。
今後は血統的に合いそうなダート路線に矛先を変えた方がおもしろそう。
10着マイネルシーガルはダイワメジャーに真っ向勝負を挑んだ結果なので仕方ない。
小細工せずにこの馬の持ち味を出そうと堂々と勝ちにいった後藤の騎乗も天晴れ。
最初から勝負を捨てて掲示板狙いというような乗り方だったら、もっと上の着順にも入れただろうが、ファンも納得のいくレースだったはず。
2歳時から完成度の高い馬だったが、まだ上積みは望める。
ただ、GIでは底力が不足していることは否めない。
16着ローレルゲレイロは深刻だ。
立て直すのは厳しそう。
どう考えても2歳6月のデビューからダービーまで使いすぎ。
そんなに生き急がせなくても・・という感じ。
血統的には決して早熟ではないが、典型的な早熟馬として終わりそう。
18着ローエングリンはここまで本当によくやった。
お疲れ様と言いたい。
気持ちよく走らせたときは強さを発揮したが、この馬はもっと精神的にもレースぶりでも器用さがあれば、もっと良い成績を残せたはず。
ついにGIタイトルは獲れなかったが、能力は間違いなくGI級だった。
その血統は超一流だけに種牡馬としても成功できるだろう。
SS産駒の肌馬とも配合できるし(ただしHaloの4×3というクロスが生じる)、 Sadler's Wells、Mill Reefといった欧州の底力ある血が入っているのも魅力十分。
何年後かにマイナー種牡馬に仲間入りなんてことはまず無いはず。
そう願っている。

